久しぶりの港区名港のカフェ「猫と窓ガラス」での演奏会。滝沢彰先生に段取りを一切お任せして、犬飼モンク興一画伯には、ポスター・チラシのデザインをお願いした。
まずもって犬飼画伯のトイピアノ演奏であるが、「トイ(おもちゃ)」と侮るなかれ。この透明感ある音の響きや余韻が、この演奏の「場」を支配していた。犬飼画伯は実に訥々と、無為自然に、ランダムに音をまき散らす。音が奏者から自立して自由に気まま踊っているようだ。
そして後藤博さんの詩の朗読。言葉の断片やフレーズの意味は耳に入って来るが、文脈を把握しようとすると、どこかにはぐらかされてしまう。不思議な詩である。理屈でこの詩を解釈しようとすることの愚かさに気づく。しかし、選ばれた言葉の響きと、その不可解なつながりに、何か荘厳な風格を感じてしまう。
Hyper FuetaicoやHeal Roughlyのシリーズでドラムセットを演奏しているMegさんとはanother sideの演奏が聴けた。「言いたいことは山ほどあるが、このひと言で言い切る」というような感じで、よく制御されて無駄吠えはしない、という意思が感じられた。限られた小物パーカッションでの演奏は、饒舌で多弁なドラム奏法のように自分を武装できない、という点で奏者の本質が浮き彫りにされた感じがした。そしてそれは良かったと思う。
この日のサックスは演奏では、フリークトーンで感情を暴発させたり恫喝したりするような手は使わないようにした。人間の声に最も近いと言われるアルトサックスでは、感情移入がしやすく、情緒過多のどぎつさが表に出てしまうことがある。そういう人間臭さむき出しの演奏は、この日の4人による共同表現には不向きである(と思った)。音を自分から解き放ちたいと思ったので・・・。
結果、無為自然な犬飼画伯のトイピアノ演奏の世界の中で、それぞれの音や言葉がたわむれることができた気がした。