Review:向井千惠+柳川芳命@Zac Baran

ロングランのシリーズで主宰している「即興表現ワークショップ」や、もう40年ほど活動を持続させている「シェシズ(ロックバンドなの?)」でおなじみの向井千惠さんと、40~50分間、じっくり向き合えた即興のデュオだった。

個人的な向井さんとのかかわりをたどってみた。

  • 1982.7.14  水上旬さん主宰の集団即興演奏会「Head Gears」にて、豊田市民文化会館で出会う。初共演。総勢11人による大会場での集団即興なので、共演したという意識は薄い。
  • 1990.4.22 今は無くなった今池の「オープンハウス」で共演。他に大友良英さんや広瀬淳二さんも出ていた。
  • 1990.12.16 名古屋の「EDラボ」という旧官舎(郵便局?)を改装したスペースにて、ディスロケーション(岡崎・木村・清川・柳川)と共演。古田一晴さんもいたかな。
  • 1994.2.12 「大阪造形センター」でのイベントにそれぞれ出演(一緒に演奏はしていない)。この日は「ディスロケーション」で参加する予定だったが、大雪のため他のメンバーが移動できず、自分は個人参加でテナーサックスソロをやる。向井さんとの共演は無かった。
  • 1998.7月か9月(?) 名古屋鶴舞の「デイトリップ」にそれぞれ出演。向井さんはソロ。自分はサマーディで参加。
  • 1998.12.26 西荻窪の「ウェンズスタジオ」で行われた向井さん主宰の第1回「パースペクティブエモーション<透視的情動>」に、岐阜の河合渉(gt,vo)さんと共に招かれ参加。自分はソロをやった。
  • 1999.6.5 名古屋「TOKUZO」で、桑山清晴さん主宰のライブで、向井さんとデュオ。
  • 2007.5.6 六本木「スーパーデラックス」でのクリストフシャルルも参加していたライブイベント<即興的遊泳>に招かれて出演。向井さんとも一緒にやったと思う。
  • 2016.5.2 心斎橋「BASSO」にて「パースペクティブエモーション」に招かれ参加。くじ引きの組み合わせでは、向井さんと演奏する機会は無かった。(余談だが、この日に後のリリカルバンビの俊山晶子さんや宮本隆さんたち大阪の方々と会った。)
  • 2016.8.26 名古屋「バレンタインドライブ」にて、自分が主宰した即興演奏会「残炎の候」に向井さんを招く。他に七感弥広彰さん、樽本里美さん。
  • 2018.3.9 名古屋「バレンタインドライブ」にて、「此の四人」(松田、近坂、鷲見、柳川)の演奏会に、対バンとして向井さん、宮本隆さん、一談さんのトリオを招く。最後に交流セッションで向井さんとも共演。

向井さんと初めて出会った82年の「Head Gears」は、午後からワーキングシンポジウム、夜にコンサートという2部構成で行われるという画期的なものだった。シンポジウムは即興について自由に演奏もしながら言葉による意見交換する場として設営された。そのときに、「私はサックスという楽器を使って即興を行っている。今はまだ楽器の扱いを自由自在にはできないので、偶然のように音が出てしまっている部分も多い。が、いずれ演奏技術が身に付き、楽器を制御できるようになれば、偶然に音が出てしまうことは減るだろう。それに対して、エレクトロニクスのような機材で音を出す人は、そのあたりの偶然性のコントロールをどのようにしているのか?機材操作において、「出そうとする音」と「出ている音」との一致はどれぐらいなのか?」という質問をした。

この質問に対する明確な回答は、(確か)無かったと思う。しかし、向井さんが「私も即興演奏の中で、偶然的に出る音と、自分がコントロールして出す音の両面のかかわりについては、とても興味があります。」と言われたことを今でも覚えている。以来、自分は、向井さんの即興に対する姿勢にいつも関心と共感を持って見ている。これからもそれは続くだろう。

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