ソロ・インプロビゼーションの現場を視聴すれば、その人が今どんな音楽をめざしているかわかる。5人それぞれが行った20分前後の無伴奏の完全即興演奏は、それぞれにアイデンティティーの強さが感じられた。
特にソロをやっていて気づくことは、熱中して演奏している自分と、それを冷静に聴いている自分がいて、両者の間にいつも葛藤が起こるということである。冷静に聴いている自分が肯定的なとき、否定的なときがあって、「いいぞ、いいぞ」と肯定的なときは、録音を聴いてみると、流ちょうで多弁、饒舌な演奏が、ときに鼻につくことがある。逆に、「あ、駄目だ、また望まぬ音が出た」と否定的になり、それが悪循環になってしまうとき、後で録音を聴いてみると、結構いい演奏になっていることがある。それは創造の真っただ中にいる状態だからなのかもしれない。他人の演奏を聴いているときでも、音と格闘しているのを感じるとき、その人の本質が見えてきて惹きこまれることがある。
それにしても、ソロ・インプロビゼーションは、かなりの集中力を要する。集中できる状況に自分自身をもっていかなければならない。それは精神面でのとても重要な課題だ。この日の演奏者たちは、素晴らしい集中力を発揮した。自分の音にのめり込みながらも、どこか醒めて制御している、そのバランスが見事だったと思う。
最後、やる予定は無かったが、5人でセッションを15分程行った。皆が「全員でセッションをしてみよう」という気持ちになれたのは、互いの演奏へのリスペクト、あるいは単純に魅力を感じ合えたためだと思う。主催者としてはとても嬉しい事だ。