9年ぶりの梅田のRecord Bar Jokeでの出演。9年前のチラシがそのままドアの内側に貼られたままだったのがうれしい。共演の中島直樹(コントラバス)さんのガット弦を張った年季の入ったコントラバスは、彼の音色へのこだわりを物語っている。過去に名古屋の「カルヴァドス」でのシリーズ『地と図』で数回共演してきたが、水入らずのデュオは初めて。俗な言い方をすればフィーリングが合うと言うのだろうか、彼との演奏はいつも間違いがない。完全即興でも「音楽」として仕上がるのである。ダークで重厚で抒情的な彼のコントラバスの音は、いろいろなイマジネーションを掻き立ててくれる。
この夜の約30分の演奏2セット、自分としては丁寧に「音で描いた」という印象である。激しく攻撃的でアヴァンギャルドなやり方は、我々ふたりにとって、とうの昔に卒業している。聴きに来てくれたMeg Mazaki(ds)さんが、「深淵を覗くような演奏」と評してくれた。まさに暗闇の中を夢遊病者のように彷徨し、内省するかのような音風景だったかもしれない。ジョルジュ・ルオーのモノクロ銅版画の人物像が思い浮かんできた。
店のドアに貼ってあった9年前のチラシ。