20世紀末の98年~00年頃、名古屋には春の「今池祭」と秋の「Lethe Voice Festival」というイベントがあった。前者は現在でも続いているが、この時期は亡くなったもQさんが頑張ってくれて、フリー、即興、ノイズ、アバンギャルドなパフォーマンスなども出演できるようになり、今池の空に奇矯な音が響きわたり、エキセントリックな踊り子などが路上に出没した。後者は桑山清晴氏が主宰し、名古屋港の20号倉庫で約1週間にわたって、これまたフリー、即興や音響派など海外からのアーティストも参加してマルチメディアなイベントが展開された。どちらも主宰者の多大な努力と賛同するスタッフの協力なしでは成立しないようなナゴヤ・アバンギャルド史に残る先鋭的イベントだった。
そういう過去の熱気を呼び覚ますようなイベントが、「海月の詩」と「パラダイスカフェ」、その周辺のありとあらゆる空間を埋め尽くして開催された。もとは海月の詩の浅井マスターから「7月22日、空けといてください。」と言われたことが発端で、浅井さんの還暦祝いセッションが行われる程度のことを想定していたが、数か月のうちに参加者数が増え、規模が大きく膨張した。こういうイベントができる土壌がナゴヤにはあるのだな。そのことを再認識した次第である。
個人的にはエレベーター前の通路で行われた総勢12人による<ボレロ(もどき)+茶会>、<Take-Bow+Meg+柳川+小松バラバラ>のセットと、当日誘ってもらって<Meg+哲太陽デュオ>に飛び入り参加した。こういうお祭り集団に呑まれると人間の気分はハイになる。やるほうも見聴きするほうも。思いもよらぬパワーとスピードが生まれてくる。しかし、これを単にストレス解消の行為と世間様から思われてはならぬ。五感を覚醒させ、情念を高揚させるアートでなくちゃあね。