Heal Roughly は、私とドラマーMeg Mazakiさんとの即興デュオシリーズだが、このフォーマットに共演してみたい奏者を「+1」という形で招いてときどき演奏会を行っている。過去には、奥村俊彦(p)さん、Take-Bow(g)さん、照内央晴(p)さん、新井田文悟(el-b)さん、佐藤シゲル(el-b)さん、そして今回の加藤雅史(contrabass)さん。
(Heal Roughly名義ではないセッションとしては、宮部らぐの(g)さん、クリストファーフライマン(tp)さん、小松バラバラ(vo)さん、武藤宏之(electronics)さん、マツダカズヒコ(g)さん、哲太陽(el-b)さんなどがいる。近く宮本隆(el-b)さんとも行う。)
できるだけ傾向の異なる即興演奏者に共演をお願いしてきた。今回の加藤雅史さんは名古屋ジャズ界では出演(共演)オファーの多いコントラバス奏者で、女性ジャズボーカルのバックからフリーインプロビゼーションまで、オールラウンドにこなされる方である。そのキャリアは実に豊かである。それだけ、柔軟で受容力が高く、安定感があり、ときにハッとさせる緊張感も共演者に与えてくれるコントラバス奏者であるということだと思う。何よりもその人柄同様の温かい音色が魅力である。Heal Roughlyに加わってもらうことで、何かを加藤さんの演奏から得たいという気持ちが強かった。
コントラバスは、サックスとドラムセットの発する音量とは落差がある。加藤さんは、アンプにつないでもコントラバスの最良の音を出せる範囲でしかレベルを上げない。かつてのセッションのリハで「これ以上上げればエレキベースのような音になってしまう」とアンプのボリウムを制限されたことがある。同じようにサックスにしても、ここまで息を入れないとリードが良く鳴ってくれないというレベルがある。ドラムセットも同じであろう。今回は、そういった各楽器のもつ「鳴り」のベストレベルの違いを生かしあいながらの合奏ができたかなと思う。蚊の鳴くようなささやかな音から、路上を歩く通行人が何事かと店内を覗き込むような激音までのダイナミズムを創り出せた点でも、これまでのHeal Roughlyに無い収穫だったかな。
まあ、その演奏会の全てミニマムな音量で終始演奏し続ける、ということもチャレンジする価値はあるが、それはあまりにストレスが溜まりそうで、未だかつてやったことはない。