Review:おちょこ+柳川芳命@なんや

2018年10月8日(月)体育の日 なんや(名古屋御器所)

おちょこさんと名古屋でデュオをやろうという話が持ち上がったのは、今年の4月なので、半年越しに実現した企画ということになる。実は私は、事前におちょこさんの演奏を一度も聴いたことがなかった。お名前は、新井陽子さん(p)やM☆A☆S☆Hと東京でよく共演しておられたので2年ぐらい前から知っていた。この日、リハーサルも二人そろってのサウンドチェックも一切しなかったので、本番まで全く予備知識なしの状態だった。

ボイスとサックスの共演はあまり経験がない。近年では谷向柚美さんとやったくらいであるが、よくよく振り返ってみたら83年に「ハネムーンズ(天鼓・カムラのデュオ)」とやっていたのだった。このおふたりも強烈だったなあ。(水玉消防団とかも懐かしい。)

サックスを始めたとき、誰かに習うとか、教則本を買うとか、誰かのフレーズをコピーするとかを一切せず、只々「この楽器からどんな音を出せるか」ということで我流でサックスを扱ってきた。人間の声とか、動物、鳥、虫の声、風の音や工事現場のような音を出すためのアンブシュアとか、タンギングや指使いを試行錯誤しながら吹いてきた。聴いている人がサックスの音と気づかないような音で演奏しようというのが当時の自分の目標だった。(おかげでジャズのスタンダード曲を吹くことすら、未だにできない。)

その頃やっていたことがおちょこさんとの共演で役に立った。世界各地、古今東西の歌唱とか声による芸能のすべて包含し、かき混ぜ、その場その場で天衣無縫に放射してくる。そこにはよどみなどない。2ステージで合計5曲やった。(4曲やって終わりにしようかと思ったら、お客さんの一人から「まだまだ!」という声がかかったので、もうひと頑張りして計5曲。)後になるほどいいデュオができたと思う。接近戦で絡み合うような場面とか、距離を置いてそれぞれが思いついた鼻歌を歌っているような場面もあって、いろいろな音風景が描けた。やってみてよかったと素直に思えたデュオだった。

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