2018年12月16日(日) ミュージックスポット燈門(大阪市・瓦町)
あかぎしほ(pf) 柳川芳命(as)
ファーストセット:30分、セカンドセット:35分
この共演を仕組んだのは、燈門のマスターでシャンソン歌手でもある岸田浩一さんである。岸田さんとは、みのやホールのオーナーをやっていた97年に知り合い、その後、レッドライオンのオーナーをやっていた99年にもお世話になっている。近年、中崎町の創徳庵を経営していたときに、岸田さんもメンバーの一人である「リリカルバンビ」と共演し、その縁で俊山晶子さんのアルバムに参加、三上寛さんとの共演や鈴木泰徳さんとの共演へ・・・と、関係が広がっていった。誠にありがたい人である。創徳庵が閉鎖した後、彼が新たにオーナーを務めている燈門に出演するのはこれが初めてで、あかぎしほさんと出会うのも共演するのも初めてのことである。これまで岸田さんがコーディネイトしてくれた初対面セッションは、どれも緊張を伴うが面白く刺激的だった。
あかぎしほさんの演奏は、名古屋のバレンタインドライブでの彼女のユニットのライブ動画を見ただけで、ジャズピアニストというイメージが強かった。(そのイメージは演奏を始めてから変わったが・・・)どんな演奏をされるのか予想はできなかった。当日、店に入ってからリハーサルも何もやらず、本番まで彼女はピアノから1音も出さなかった。
ファーストセットで初めて音による交感が始まった。透明な結晶が躍るようなイメージの演奏で、情感がダイレクトに伝わってくる。気まぐれに移り変わるサックスの奇妙なメロディーを、その都度美しく彩ってもらえた、という感がある。即興演奏は、ストーリーもセリフも決まってない芝居のようなものなので、その人がこれまで生きてきた中で感銘を受けた音楽とか、音への嗜好性とか、音楽に対する考え方とか、どんな音楽をやりたいのか、という本心が剥き出しのかたちで表れるものだと思う。そういう本心を感じ合うのが面白いので自分は即興演奏ばかりやっている(と言うか、すでに書かれた音楽を再現する演奏技術がない)。
初めて出会う人と即興演奏をしてみるということは、相手に対する尊重とか、自分の素直な開示とかが大事なんだろうなと思う。この日はお互いに反応し合って美しく抒情的な音楽が生まれた。美し過ぎたかな?と思えるほど。けれどそのことを「良かった」と互いに感じ合えたことは何よりの成果だったと思う。
ふたりともファーストセットのとき録音機を作動させるのを忘れた。緊張していたのだろうか?悔やまれる。