Review: Machine Gun 2019@TOKUZO

2019年2月3日 TOKUZO(名古屋 今池)

出演:不破大輔(conduct./b)   竹内直(ts/bcl)   吉田隆一(bs)   柳川芳命(as)

大森菜々(p)  一ノ瀬大悟(b)   本田珠也(ds)   江藤良人(ds)       Produce: 千葉正己

1968年にヨーロッパのFMPレーベルからリリースされたペーターブロッツマン・オクテットの”Machine Gun”を、(ある意味)再現する形で組まれた企画。TOKUZOの20周年イベントの一つとして開催された。プロデューサーの千葉正己さんの人選で、このアルバムと同じ楽器の8人のプレーヤーで編成された。(ただし、私のパートのアルトサックスは本アルバムには入っていない。)

68年という年は、世界中の多くの国々で文化の面でも政治の面でも解放を求める運動が盛んな時代だったように思う。Love&Peaceの時代でもある。私は小学校6年生であったけれど、東大紛争をはじめとする学生運動などもニュースでよく目にした。日本でも(詳しくは知らないのでいい加減なことは言えないが)音楽、文学、演劇、舞踏、映画の世界で、アバンギャルドな作品が、従来の価値観や美意識を転覆するように発表されていた時代だと思う。小学6年生の子どもなりに、何か気持ちが浮足立つようなエネルギーが世の中に渦巻いてるのをテレビやラジオで感じ取っていた。しかし、その時代のエネルギーの中身をちゃんと知ったのはもっと後の時代になってからだが・・・。本アルバムMachine Gunは、極めて過激で凶暴なヨーロッパのフリージャズの作品として著名だが、日本でもフリージャズが台頭し、とにかく過激であることが若者を動かす条件だった。

今回のこの企画に参加させてもらうことになって、改めて音源を聴いてみた。3曲あって、うち2曲は2テイクずつ録音されており、全部で5テイクがアルバムに収められている。昔は冒頭のMachine Gunの出だしと、その途中までしか聴いていなかったので、改めてアルバムを通して聴いてみた。けっこう曲の随所であらかじめ用意されていたと思われるフレーズやリフが出てくる。また、展開の仕方にも道筋が決められているようで、同じ曲を2テイク聴き比べてみると展開パターンがほぼ同じだという事がわかった。8人のメンバーで演奏するのだから、全くの完全即興では収拾がつかなくなるのと、当時はまだブロッツマンもテーマのあるフリージャズの手法で演奏をしていたのだろう。

3曲(「Machine Gun」「Responsible」「Music for Han Bennink」)の各曲に、2つずつぐらいのテーマらしきものがあり、3曲で合計7つのテーマがある。その7つをバリトンサックスの吉田さんが譜面にしてきてくれた。当日はそれに2つぐらいプラスして7~9つのテーマを、演奏の転換の随所に入れて、3曲を分けて演奏するのではなく90分間通して演奏することになった。どこでどのテーマを入れるかは、コンダクターの不破さんから出される。また、8人の中で誰と誰を組み合わせて演奏するかという指示も不破さんに出しもらうというやり方をとった。ただし、プレーヤー側からの自発的な判断での出方も容認されるという自由度の高い集団即興にしてもらえたので幾分気が楽になった。

実際の録音を聴き返したところ、正味80分弱の演奏だったが、演じている側にはその長さを感じなかった。7~9のテーマ自体、ワルツ風のもの、カリプソ風のもの、8ビートのロック的なものなどあり、演奏の色彩が多様である。なので、リスナー側からも予想もつかない展開を楽しめたのではないかと思う。

非常に多くのお客さんに集まってもらえたこと、こういう機会でもなければ共演できないような著名なプレーヤーと共演出来たこと、そのことにプロデューサーの千葉さんには深く感謝したい。

写真提供:藤井勝好さん、いつも素敵なショット、ありがとうございます!

プレゼンテーション1