Review:天元(with近藤久峰)@GHOST V

2019年3月9日(土) jazz GHOST V(岐阜市 長住町)

渡辺敦(ts)    柳川芳命(as)   近藤久峰(ds)

※天元はプラスティックなメンバー編成による「即興音楽旅団」で、前回は木全摩子さんがドラマ―で参加しています。

天元の主宰である渡辺敦さんとは、これが3回目(カラオケボックスでのリハーサルセッションを入れると5回目)になる。ジャズサックス奏者としてのステイタスをもっている方であるが、ジャズに傾倒し始めた頃には山下洋輔トリオとかのフリージャズも吸収しており、1年ちょっと前に私やysmとの出会いによって、パンドラの匣にしまっておいたフリージャズのイメージが暴発し、一気にフリーインプロの世界にもなだれ込んできた、という方である。わずか3回目の演奏会にして、(いわゆる)ジャズイディオムを加速度的に破壊し、自由奔放にブロウしているのは、若い頃のフリージャズの洗礼があってのことだろう。しかしながら、ジャズの持つソフィスティケイトされた美学も持ち合わせておられるので、アルトと合わせて吹いていると、ときに幽玄、ときに牧歌的なハーモニーが偶然のように生まれ、心地よく酔えるときがある。その音色やフレーズ、アーティキュレーションからは、泥臭く粗暴でフリーキーなテナーとは一味違う香りがする。

2ステージ目の途中、渡辺さんと近藤さんのデュオになったとき、近藤さんのドラムの陰にラシッドアリが潜んでいるような感じがした。近藤さん自身ラシッドアリに傾倒しているところもあるそうなので、渡辺・近藤ラインから後期コルトレーンの音楽(「惑星空間」)を連想したのもうなずける。

近藤さんと少人数で共演するのは本当に久しぶりである。96年に今はもう無くなったKUKU(名古屋 栄)で近藤さんと会ったとき、自分は40歳、彼は20代前半だった。若いのにやたらと60年代のフリージャズや70年代のロフトジャズに詳しく、ドラムのテクニックもあったので、気に入って何回か共演した。その後のライブでの共演回数は少ないが、97年から14年まで、僕と彼とは日本天狗党の信州国際音楽村での年一回の合宿セッションに欠かさず参加してきたので、その寝食共にした共演回数は結構なものになる。そういうわけで、この日も一緒に音を出していて、阿吽の呼吸というか、手の内を知り尽くした者同士のインタープレイになった。

3人でやっているときも、音だけで誤解しようのない的確なコミュニケーションとコンセンサスができる集団即興になったと思う。3人とも意地悪なことをせず、素直かつ誠実にオトナの会話をして合意形成のできるトリオ、という感じだったかな。そうだ、このトリオを「談合トリオ」と名付けようか・・・・。

プレゼンテーション1

写真は、オーナーの黒田さん撮影。このたびも拝借しました。ありがとうございます。