Review:サマーディ/勅使河原富江ノ欲情

2019年3月22日(金) なんや(名古屋・御器所)

◇サマーディ <鈴木茂流(b)、マツダカズヒコ(g)、柳川芳命(sax)>

◇勅使河原富江ノ欲情 <近坂祐吾(ds/sampler)、中野恭子(fl)>

「サマーディ」はこのところ、丸市さん、Meg MAZAKIさん、野々山玲子さんといったドラマーを加えた形態での演奏が多かった。また、後藤宏光さんのパフォーマンスとの共演も数回行ってきた。今回は、オリジナルの3人のみで演奏。「勅使河原富江ノ欲情」との2本立てでのライブである。マツダ・近坂ラインは以前からの共演歴も長い。また、マツダ・近坂・柳川は「此の四人」というユニットのメンバーでもあるので、やや近親相関的な組み合わせと言える。「勅使河原富江ノ欲情」は今回のライブで改めて命名されたユニットであるが、近坂・中野の二人に私を含めた3人ですでに昨年3月末に共演を始めている。

ところで「トミエ」という名前からは、レトロな日本女性を想起するが、そういえば太宰治が玉川上水で心中した相手の女性が山崎富栄(ヤマザキトミエ)だったことを思い出した。どこか薄幸で一途に思い詰める献身的な女性像をイメージしてしまうのだが、近坂さんと中野さんの演奏は、そういったウエット感はなく、ストーリー性のある文学的な演奏というより、非連続的・分裂気質的な抽象絵画のスライドショーを見ているように思えた。スイング感、ドライブ感といったいわゆる「ノリのある」リズムをあえて排した脱構築型のドラムに、リリカルな響きのフルートが絡むことの逆説的な調和が面白い。

ドラムレスのサマーディの演奏は、幻想的、幻覚的、瞑想的・・・そんな風味が漂っていた。ドラムが入らないことでタイム感覚が拡散していくようだ。演奏の流れに「よどみ」や「這いまわり」が起きて聴いている人にとって退屈ではないか?という懸念を演奏中もっていたが、録音を聴き返してみたらさほど退屈ではなかった。あからさまに反応し合ってクライマックスを作っていくのを3人とも避けているためか?と個人的には思っているのだが、鈴木氏、マツダ氏はどう思っているかはわからない。(レギュラーメンバーではない)ドラマ―が入ることで、実はそのドラマ―が3人のまとめ役になっていたのだろうか?などとも考えてしまう。とにかく私にとって、サマーディは長年やっていても不可解な要素のあるユニットである。

最後に合同で約20分程演奏した。5人揃うとなかなか面白い展開になる。例えて言うなら、ロック風味をベースにしたスープに、意外性のある組み合わせの具が入り混ざったエキセントリックな料理のようだ。美味いか、不味いか、その感想はオーディエンスさまざまだろう。

プレゼンテーション1