2019年4月24日(水) カフェ『猫と窓ガラス』(名古屋 名港)
三上寛(vo/el-g) 柳川芳命(as)
三上さんにとって平成最後のツアー終盤にあたる夜であった。平成最後ということに特に三上さんがこだわりを持っているようには感じなかった。自分のイメージの中では、三上さんは「昭和」が似合う人だ。自分も32年間昭和に生き、30年間平成に生きたわけで、昭和の流行から受けた影響は圧倒的に大きいと思っている。
三上さんとは昨年3月末に今池の「バレンタインドライブ」で初対面かつ初共演して以来2度目である。今回も三上寛さんの世界に自分も浸りきって演奏しようと思った。45分ずつの2ステージ構成で、サックスは思いつくまま髄所に吹かせてもらった。三上さんが何の曲を歌うのか、事前に打ち合わせなどなく、ステージでギターを弾きながら唄い、語り始める三上さんのパフォーマンスに、即興でサックス演奏を絡ませる。リハーサルは無く、やり直しも無い。三上さんの唄をいきなりその場で聴いて、曲想をつかみ、メロディを理解しながら、同時進行で即興でサックスを吹く、これにはかなりの集中力がいる。ふだんにない疲れを演奏後味わった。唄には「節」がありサックスの吹奏には「旋律」がある、両者の調性にあまりにかけ離れた違和感あると、やっていて気持ち悪い。かと言って普通の歌伴奏のようにやるなら、もっと優れた技術を持ったサックス奏者は山ほどいる。完全即興しかやってこなかった自分をどう出していくのかというのは難しい課題であった。
これまで即興でフリーにやってきたと言っても、メロディは聴く者の琴線に触れる一番大きな音楽の要素だと思うので、そこは三上さんの世界に共鳴しながら曲調に添うようなメロディを奏でたつもりである。が、ときどきそこから逸脱するような音をスパイスのように交えることで、破たんの美というか乱調の美を匂わせたつもりなのだが、聴いていた人はどう感じただろう? 82年からずっと私の演奏を聴いてくれている犬飼モンクさんは、終演後「今日は柳川さんの新しい一面を見た」と感想を述べられた。