Review:鈴木泰徳+登敬三+柳川芳命@JK’sRUSH

2019年5月8日(水)JK’sRUSH(大阪 高槻)

・鈴木泰徳(ds) 登敬三(ts) 柳川芳命(as)

随分以前に鈴木さんの提案でこの3人でやる企画が持ち上がっていて、実現まで長い期間温めてきた。これまでに、鈴木+登、鈴木+柳川のそれぞれのデュオは行われている。3人でやるとどうなるか?という期待感のふくらみがこのトリオを実現させたのである。しかも完全即興でやるという条件で。

登さんと最初にやったのは97年7月、場所は上新庄にあった「ブルーシティー」と栄の「KUKU」だった。翌月には名古屋の本郷にあった「聖家族」でもやっている。その後長いブランクの後、14年に野道幸次(ts)さんの企画で、名古屋今池の「バレンタインドライブ」で久しぶりに共演。そして今回を迎えた。久しぶりに一緒にやってみて改めて登さんのテナーを鳴らし切った豪放な音と、よどむことなく湧き出てくる多彩なフレーズが凄いなと感じた。一歩前に出て即興を牽引していくプレイだった。

何の打ち合わせもリハもなく始めたファーストセットは1曲で三十数分。考えるより先に次の音が出たがっているという感じで、三者もつれ合ってゴールまで駆け抜けるような演奏だった。

セカンドステージの前に、鈴木さんが「次はさっきとは違う風景が見えるかもしれないし、同じような風景になるかもしれない。」というアナウンスをされた。演奏する側の気持ちとしてはさっきとは違う演奏にしようという暗黙の合意が三人にはあったと思う。ファーストセットとは違って疾走感の無いフリークトーンの音遊びのような出だしで始まる。これはこれで(やっている側にとっては)面白いものになった。自然な感じで徐々にヒートアップして、こちらも1曲で三十数分。

完全即興の演奏は聴いているよりもやっているほうが面白い、などと言われるが、それは一理あると納得する。知っている曲のテーマがどんなふうに演奏されるだろうかとか、そのテーマからどんなふうにアドリブが展開されるだろうかということに関心をもって聴くジャズのリスナーには、完全即興にはそういった拠り所がないのでつまらないかもしれない。難しいとか聴いていても楽しめないとか何をやっているのか分からないという人は、奏者が今どんなふうに演奏をつなげようとしているのかとか、共演者の音にどんな反応をしているのかとかを推し量りながら聴くと、たとえ自分が演奏をしていなくとも目の前にいる奏者と同じ土俵で音の渦中に居られるのではないだろうか。そういう聴き方をするのはいかがかな?

さて、今月の5月19日には伊丹の「オールウェイズ」という店で18人の日頃はジャズをやっている奏者が集まり、くじによるランダムな組み合わせで完全即興のデュオを9組やるという企画がある。これも鈴木さんの主宰である。テーマがあり、コード進行のあるアドリブで本領発揮するジャズの奏者たちが、地図もコースもゴールも無い中でデュオのパートナーの音を何らか意識して約30分間即興演奏をするのである。とても興味深いイベントだ。その人の音楽観とか人とのかかわり方みたいなものがむき出しになるからである。今大阪では鈴木さんを核に、完全即興の布教が始まっているようで楽しみなことである。

nobori suzuki yanagawa