Review:烏合ノ徒@なんや

2019年5月22日(水)なんや(名古屋御器所)

・野道幸次(ts) 小林雅典(g) 吉田崇(per/syn) 柳川芳命(as)

発起人は野道さん。メンバー人選に関して言うと、小林さんは当初から野道さんの頭の中で候補に挙がっていた。『あと一人だれかを・・・』と考えてみた。『<管>と<弦>が揃っているので、あとの一人は<打>かな?あるいは非楽器の電子系・・・』と思いをめぐらせた。一般的(?)なフリー系のドラマーとはちょっと異質で、視点をずらせてくれるような人・・・と考えていて真っ先に浮かんだのが、パーカッションとシンセサイザーを操る吉田崇さんだった。

イメージとしては、できるだけメンバーそれぞれが唯我独尊のようなプレイをして、無規律、無統制の中で、あたかもソロの同時進行といったような個人主義的なグループにしてみたいと思い、タイトルも『烏合ノ徒(うごうのと)』となった。

約45分のフリーインプロヴィゼーション2曲をやってみた。勿論、筋書きや出順なども一切決めず4人で始める。1曲目は結構調和の感じられる響きが生まれた気がする。野道さんと吉田さんはこの日初顔合わせということもあり、それぞれが試し合うといった感じ。小林さんはギターの奏法やセッティングを変化させて臨むので、その日、そのステージによっていろいろな局面を見せ、その都度別人のようになる。いろいろな起伏を経てそれぞれが演奏の出口を模索しながら、心の中で『もうこのへんできりをつけよう』と合意したのが、演奏開始から45分経ったときであった。

2曲目(個人的には2曲目のほうが良い出来だったと思うのだが・・・)、ラフファイトも織り交ぜながら、空気を読まず秩序を乱すようなこともやってみた。<烏合>の合奏らしくなった。終末になるとさらにそれがエスカレートし、1曲目と同じく約45分経過して音が止み揃った。振り返って後ろで演奏していた吉田さんを見ると、ジャンベ、フロアタム、シンバル、ドラ、シンセサイザーなどが、地震が起きた後のような状態で山積みになっていた。

録音を聴き返してみると、やっていた時にはアナーキーに感じた2曲目も、そのアナーキーさすら調和的に感じられるという逆説的な印象を受けた。店主のPUYOさんの印象はこうであった。

『4人のバランスがよく取れた演奏だった。出過ぎず引き過ぎず、出たり入ったり。ドカンとした音も出て、個々のきらめきもあって、おもしろかった。それも、全体の流れの中では、違和感はなく、曲調が出来上がっていった。(ぷよ)』

4人とも即興演奏に関してはけっこう修練を積んでいる。意識的であろうが無意識的であろうが、自分以外の3人が何をやっているのかを受容できている。実は協調性が身に付いたオトナのカラスたちだったかもしれない。それはそれで悪くない。

烏合ノ徒