2019年5月26日(日)『Reiwa Alians Improvisation』
蔵元・藤居本家 欅の間(滋賀 稲枝)
松原臨(ss) 富松慎吾(太鼓) 照内央晴(p) 柳川芳命(as)
※アカノシバヒト(尺八)にて飛び入り出演
昨年に引き続き、松原さん主宰で藤居本家にて開催。今年度は照内さんがグランドピアノで加わり、4人編成で行う。富松さんの大太鼓(直径約1メートル)を搬入でき、演奏を許可される会場は決して多くない。この、およそバスケットボールコート一面が余裕で入るだけの広さの「欅の間」なればこそ、富松さんの大太鼓の音は生かされる。さらにはグランドピアノが常設されているとあれば、このメンバーでの演奏には最適である。大きなガラス窓の向こうの豊富な緑の庭の木々に囲まれている環境も心を落ちつかせてくれる。オーナーがまったく関知せず好きなように会場を使わせてもらえるのも解放感があって良い。
サックスという楽器も、どれぐらいの広さのスペースで演奏されることを想定して作られた楽器なのかは知らないが、これだけの広い空間ならフルスロットルで遠慮なく吹けるのは嬉しい。音が会場いっぱいに広がり跳ね返ってくるまでの間が、演奏にゆとりを与えてくれる。音響的にはこれ以上文句のつけようのない環境である。
残念ながらアクセスの点において、JR稲枝駅から車で10分弱という位置にあるので、集客はなかなか難しい。まあ、どのようなライブ会場でも、完全即興のライブはなかなか集客は厳しいが・・・・。音的に良い条件・環境で演奏することを優先するか、集客のことを優先するかは悩むところである。
かつて、自分が演奏を始めた20代半ばの頃は、人が集まらないことでジャズ喫茶とかライブハウス側から嫌な顔をされるぐらいなら、自分で会場を借りてやったほうが気兼ねなく演奏できると思って、安く借りられるギャラリーで「自主コンサート」を行った。東京の若く当時まだ無名のフリージャズのミュージシャンたちは、自分で会場設営して有名なジャズ喫茶とかレコード会社とか音楽プロデューサーとか、「権威」や「商業主義」の匂いがするものとは袂を分けて、自主的なゲリラ的な活動を信条としてきた。ジャズが商品化し、ファッションの一つになることから、自分たち演奏者のものに取り戻そうという動きだった気がする。1970年代の頃の話だが・・・。(その頃の当事者ではなく、外から見聞きして、伝え聞いたことや読んだことでものを言っているので、誤った理解かもしれないが・・・。)
で、この日の演奏だが、大太鼓、グランドピアノ、サックスという楽器たちにとって、これほどナチュラルで良い響きのスペースで演奏され、ふがいない音を出すはずはない。放たれた音が嬉しがって欅で作られたこの空間を飛び交っているのが目に見えるようだった。