2019年7月31日(水) Annie’s Cafe(京都)
・藤田亮(ds) ソロ ・柳川芳命(as)ソロ
藤田さんとは何度もデュオをやってきたが、今回は藤田さんのアニーズカフェでの2度目の出演(ソロ)に混ぜてもらう形で、それぞれソロをやるという企画である。自分にとっては初めての店でのソロということで新鮮な思いで臨んだ。
この店は、もとはダンスホールだったそうで、天井が高い、床面積が広い、客席スペースが広い、など、室内の空間にゆとりがあって、生音で十分な響きが得られるスペースだった。ステージが蓄音機のラッパの奥にあたるような場所で、客席に向かって音が広がって放たれる構造である。きっと録音などにも向いているように思った。
始めに藤田さんが、「マリリンモンロー・ノーリターン(野坂昭如歌唱)」を枕にソロを始める。この曲、たぶん70年ごろの曲なので野坂氏40歳ぐらい歌声である。店にこの曲が流れた時は別人のカバーかと思ったが、聴きに来てくれていた酒游舘の西村さんが、野坂昭如の歌だと言われたので、やはり声が若い頃なのだな思った。丁度、今の藤田さんと同じぐらいの年齢か・・・。
F.Oされて、ドラムソロが始まる。改めて藤田さんのシンバルワークが独創的だと思った。いつもながら自分には、シャーマンの降霊儀式の音楽を連想させる。反復される細かいリズムに乗って、ランダムに放たれるシンバルの疾風に聴く者は陶酔に巻き込まれる。無駄も停滞も無く20数分の演奏が終わったあとには爽快感が残った。
休憩の後、アルトソロを始める。ソロは特に「出だし」がそのあとの即興の流れに大きく影響する(と、つくづく思う)。ときどき、あまり集中できてない中で音を出してしまって、そのあとの展開が散漫になることがある。この日は、良い集中から演奏を始めることができた。普段、どういうイントロにしようか、と前もって考えるようなことは決してしない。ステージに立ってマウスピースを咥えてからの、ほんの瞬時がとても大事な時で、このときに音が閃くときは、以後、自分の演奏にのめりこむことができるような気がする。
ソロの途中、藤田さんのドラムがとても自然に介入してきて、背中を押されたような感じでヒートアップしてしばらくデュオが続く。ドラムの音が消えてから再びソロに戻るが、少しエピローグ感覚での演奏に入るのが早かったため、あっさりと終息して終わる。こちらも20数分という最近の中では短めな吹奏だった。
ソロであれば20~30分以内の演奏が、リスナーの立場を考えるとちょうどいい長さかなと思う。やはりLPレコード片面の長さぐらいが集中して聴ける限界のような気がする。どんなに素晴らしい瞬間が連続する即興音楽を生で聴いていても、途中から「長いな」と感じた瞬間から、一気に熱が引いてしまうのは自分だけだろうか?それを戒めにして、どこで演奏を止めるかを考えるようにしているのだが、そもそも長いか短いかは、聴く人の個人差の問題なのでどうしようもない。客席から集中が途切れて体が動く気配が伝わってきたら、そろそろやめたほうがよさそうだな、と考えることにしている。「終わりよければ全てよし」である。(終わり悪ければ全部だめということだな。)