Review:夏の夜の音@揚輝荘 聴松閣

2019年8月3日(土)「 夏の夜の音」(名古屋 覚王山)揚輝荘 聴松閣  多目的室

ダンス:中沢レイ / てらにしあい / 高木理恵 / ヤスキチ / 鈴木清貴  /田辺舞

パフォーマンス:山口純  メディアアート:武内秀光

サウンド:森定道広(contrabass)     野村ぽっぽ(guitar)     柳川芳命(sax)

主宰の中沢レイさん始め、てらにしあいさんや高木理恵さんとは、津での「オービタルリンク」や、アトリエ「クーゲル」での会などでご一緒したことがある。特に、てらにしあいさんには、自分が企画した演奏会に出演していただいたこともある。

森定道弘さんは、82年に今池の(今はもう無い)「ユッケ」という店で、コントラバスのソロ・インプロヴィゼーションをやられたとき、一人の客として聴きに行って以来の再会である。82年は自分も名古屋を中心に即興演奏活動を始めた年で、森定さんはその先駆者として勉強するつもりで聴かせていただいた。てっきり大阪に在住されていると思いきや、滋賀の信楽に住まれて、もう長きにわたるとのこと。こういう機会でもなければ、お会いできずじまいで終わったかもしれない。

当初の予定では、大岡英介さんがギター演奏で参加されるはずが、この猛暑の中で体調を崩され出演できなくなった。大岡さんとも初共演できることを楽しみにしていたが、それが叶わず残念だった。代役というのは失礼だが、この仲間にかかわりの深い野村ぽっぽさんが急遽参加することになった。野村さんは、かつてカルヴァドスでのシリーズ「地と図」に出演していただいたこともあり、共演は嬉しいことだった。

会場の揚輝荘は、大正から昭和にかけて建造された由緒ある建物で、我々が行ったイベントスペースは、旧舞踏場(現多目的室)ということだった。決して広くはないが、かつて迎賓館として舞踏会を行っていた部屋というだけに、歴史的に感慨深いものがあった。

今回の「夏の夜の音」は、中沢レイさんによる約1時間にわたる構成で演じられた。一つのテーマに基づいたストーリーの中で、それぞれのダンサーが独自の表現を繰り広げながら各シーンを描き出すというものだった。そして、個々のダンサーがメインとなって表現するシーンに、楽器演奏者が1対1で即興演奏を行った。これは自分にはとても面白かった。というのも、個人的な見解だが、身体表現をする人と共演する際は、できれば1対1の形態で行うのが一番面白いと思っていたからである。この日、自分は、中沢レイさんのシーンと鈴木清貴さんのシーンで、ソロで関わらせてもらった。改めて思ったのは、身体表現という視覚に訴える動きが、音の展開にいろいろなインスピレーションを与えてくれるということだった。勿論、音と身体の動きは相互作用で影響し合っていくのだが、そういった共同で創造する上では1対1が一番いい関係ではないかと思う。

それぞれ強力な磁場を持ったダンサーが自身のスタイルで場面をつないでいく中、「演じること」と「日常行為」とのボーダーを超えるような山口純さんのパフォーマンスが途中で挿入され、観客を巻き込んでいく展開に、緊張から解き放たれ、弛緩を味わえるような場面もあった。

このイベントが魅力的なのは、トータルとしてのテーマ性を匂わせながらも、個性的な出演者たちの持ち味を生かすことが十分に保障されているところではないかと思った。そして、こういう集団の表現の在り方は、とても望ましいのではないかと感じた。

もう一つ感じたことは、ダンサーやパフォーマーの方たちは、観客とのコミュニケーションを常に大切にしているという点である。これは自分はさほど意識も努力もしてこなかったことである。即興演奏における演者と観者のコミュニケーションとはどういうことなのか?をよく考えないといけないのだろうな・・・。それを突き詰めて考え始めると、寿命がどれだけあっても足りないような気がする。それだけ大きな課題なのだ。

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