2019年9月28日(土) 滋賀 近江八幡 サケデリックスペース酒游舘
・水谷浩章(contrabass)+LUNA(vocal)
・藤田亮(drums)+柳川芳命(alto-sax)
水谷さんとLUNAさんの3日間のデュオツアーの2日目に、対バンとして藤田+柳川の無頼派二重奏で出演。藤田さんとは5月末の「海月の詩(今池)」でのデュオ、7月末のアニーズカフェ(京都)でのお互いのソロ以来である。
水谷さんとLUNAさんは、双方ともマイクやアンプを使用せず、生の声、コントラバスの生の音での演奏だった。酒游舘の空間とそれがよく調和し、声帯や楽器からストレートに出てくる音が豊かに鳴り響いた。勿論そこには、声を響かせるとか、コントラバスを鳴らし切るとかいう確かな技量が備わっているからであって、そのために日々ストイックに精進しておられるお二人の姿勢が音に具現されていた。最後に出演者4人で集団即興をやったけれども、アンプラグドのコントラバスも生の声も、ドラムスやサックスの音に埋もれることなく抜け出て聴こえてきたのは驚きであった。
さて、藤田さんとのデュオであるが、ここ酒游舘では非常に集中して演奏ができる。自分としては演奏中の自分を客観視して演奏できた気がする。即興演奏の流れを比較的冷静に制御しながら演奏できたということでもある。(しかし、こと即興演奏に関して言うと、コントロールできず四苦八苦して何をやっているのかつかみどころのない演奏のほうが面白い、という人もいて、即興というものへの評価は一筋縄では済まない。)それだけ邪念なく、自分の演奏に没頭できる環境、そして共演者であったためだと言えよう。昨年リリースしたCD『無頼派二重奏』の録音からちょうど1年たったのだが、今回のほうが、無駄や、曖昧さや、手ぬるさがそぎ落とされた演奏になったように思う。ある意味それは聴きやすくなったとも言える。が、尖っている部分は損なわず維持できたのでないかと思うし、今後もそうでありたい。
万人に受けるような演奏をしようという気は毛頭無いが、少なくとも自分自身には満足できる即興演奏をしていたい。そのために自分の演奏を毎回録音して、その日のうちに聴き返しているのだが、それは、客観的にリスナーの立場に立って自分たちのやったことを検証したいという思いからである。演奏中は自分の演奏にのめりこんでしまい、共演者が何をやろうとしているのか見落とすことがある。演奏中につかんだ印象と、録音を聴き返してみての印象に違いを感じることは多々ある。今回の藤田さんとのデュオでは、やっていた時の印象と、録音を再生したのを聴いた時の印象との間にあまりズレが無かった。こういうときは良い出来だったと自負していいのだろうか・・・。