Review:日本天狗党 秋の中部・関西ツアー

2019年10月25日(金)名古屋・今池「海月の詩」

日本天狗党、After It’s Gone+中島直樹(b)

2019年10月26日(土)岐阜・長住町「ゴースト V」

日本天狗党、After It’s Gone+Take-Bow(g)

2019年10月27日(日)近江八幡「酒游舘」

日本天狗党、隣人、After It’s Gone+井上和徳(ts)

セッション:松原臨(as)、横井俊浩(as)

恒例になった日本天狗党の中部・関西ツアーも今年で4年目。今年は上記3か所巡っての演奏になった。(「海月の詩」と「ゴースト V」は今年初めての会場)

自分は21歳の頃から日本天狗党とのつきあいが続いているのだが、天狗党の3人も自分も還暦を超え、ツアーやライブに邁進できる生活が出来るようになったと言える。体力的にはかつてのようにはいかないかもしれないが、音のほうは決して退行しておらず、その迫力たるや初めて聴く人は間違いなく驚愕する。ただ爆音でうるさいというわけではなく、アルトもテナーもドラムもfffでレベルメーターを振り切るほどの音量でも、音が綺麗である。天狗党はたいてい約40分ぶっ通しで1曲演奏して終わるのだが、天狗党の音に浸っているうちに、もっとこの音を浴び続けていたい、という気になる。しかも、僕の感じているところでは、天狗党の魅力が最大に発揮されるのはスタートしてから30分を超えた頃、普通なら徐々に疲弊して音も萎えてしまうのだが、天狗党は30分を超えたあたりからが本領発揮だという気がしている。なので、音を浴びている者は、ここからが醍醐味だという覚悟で聴いてほしい。

フリージャズのリスナーよりもロックの、しかもパンクのリスナーが天狗党の演奏に強いシンパシーを感じる、ということだがそれも頷ける。こざかしい技よりも、一音そのものの中に圧倒的な力が宿っている。また、結成が74年ということなので、もうバンド歴45年になるにもかかわらず、馴れ合いや予定調和の演奏にならず、徹して個々の自由を尊重し合っている。そのあたりもパンクなのかもしれない。

天狗党のこのツアーは、自分とMeg Mazakiさんとの共同企画でスケジュールを組み、ブッキングやフライヤー作成に取り組んでいる。それで、柳川+Megのデュオシリーズ”After It’s Gone”+1という編成で対バンとして共演させてもらった。初日「海月の詩」での中島直樹さんは昨年に引き続き、中日の「ゴーストV」でのTake-Bowさんは、もう何回も天狗党との対バンで演奏している。最終日酒游舘での井上和徳さんは、唯一今年初めての参加である。彼は大津TIOの即興セッションで中核的存在で活躍してくれていて、地元滋賀県の彼を交えて酒游舘でやってみたかった。

中島さん、Take-Bowさん、井上さん、それぞれが柳川+Megデュオへのカンフル剤になった。3日間のどのセットも演奏はエキサイティングになった。

◆ 初日<海月の詩>

スライド1

◆ 中日<ゴーストV>

スライド2

◆ 最終日<酒游舘> 

最終日の酒游舘では、出演メンバーである、「日本天狗党」「隣人(宮部らぐの+小松バラバラ+Meg Mazaki)」、「After It’s Gone+井上和徳」の3グループのメンバーに、当日参加の松原臨(as)さんと横井俊浩(as)さんを交えた総勢10名から、デュオ、トリオをその場で編成してセッションを4つ行った。(下記写真の下段)

スライド3

下段の写真、左より

・宮部らぐの(g)+柳川(as)

・赤木憲一(ds)+井上和徳(ts)+横井俊浩(as)

・鈴木放屁(ts)+小松バラバラ(vo)

・赤木飛夫(as) +松原臨(as) +Meg Mazaki(ds)

今回はじめて全即興の演奏をやってみる奏者と40年以上やっている奏者とが、対等な関係で共演できるのも即興演奏ならではである。インプロヴィゼーションほどリベラルな音楽は無いかもしれない。いい交流ができた。

https://blog.goo.ne.jp/sightsong/e/ea1bbfac9577827e800dd51315fccc82?fbclid=IwAR2IVx_ZO39vbOIrEnCuE3jZUd-8GSm9NXCYffuMuFtOcDJ-LGZx7lM1hPs