Review: 齋藤直子+柳川芳命デュオ@スキヴィアス

2019年11月2日(土) 名古屋伏見・納屋橋 特殊音楽バー「スキヴィアス」

・齋藤直子(as)     柳川芳命(as)

アフターセッション:+ 新井田文悟(el-b)、     +  小林雅典(el-g)

2018年7月に名古屋今池の「海月の詩」で開催された『時の隙間』という一大イベント(マスター浅井一男さんの還暦祝いも兼ねて)で、東京からMaresukeさんと共に参加された女性アルトサックス奏者の齋藤直子さんをはじめて知った。しかし、お互いの演奏は当日の出番が重なったため、聴くことは出来ていなかった。彼女の演奏に対するMaresukeさん、M☆A☆S☆Hの森順治さんや雨宮拓さんからの言葉から、同じ即興アルトサックス奏者同士、いつか一緒にやってみたいという思いは、その頃からあった。そのうち、齋藤さんは新井田文悟さん等とのつながりから、東京から「なんや」に演奏しに来ているということを知って、それならば、「スキヴィアス」で自分が演奏する機会に、齋藤さんに来てもらってアルトサックスのデュオをやろうと思った。

これまでにも何人かとアルトサックス同士の即興デュオをやってきた。バンドとかトリオやカルテット等で自分と同じ楽器の人を交えることはあまりしないのだが、アルトサックス奏者と共演するならば、デュオの形態をとることが自分には面白い。

当日、お互いの演奏についてまったく未知の状態だが、あえて白紙の状態・先入観なしで同時に始めてデュオをやることにした。スリル満点である。17分ほどのデュオだったが、やってみて思ったことは、齋藤さんは相手の演奏の気配(細かなフレーズとかリズムとかいうレベルではなく)に敏感に共鳴する人であることがわかった。それをストレートで自然にやってしまうと感じた。

次に、お互いにどんなサックス演奏をしたいのかを知るうえで、どちらかのソロから始め、入れるところで入ってデュオになる形で交互にやった。結果、自分が感じたのは、演奏の志向が比較的似ているかな、ということだった。自分もこの頃は、あまり奇をてらうような奏法や、ノイジーなフリークトーンをやらなくなったのだが(なぜなら、そういう演奏が姑息でスケールが小さく感じるようになったので・・・)、齋藤さんの演奏も、はったりをかますとか威嚇するとではなく、素直な演奏を心がけているように(勝手に)思った。巨視的に見れば、演奏への構えには共通するものがあるけれど、細部については勿論いろいろと違いがあって、そのあたりの絡みはやっていて楽しめた。どこで演奏のイニシアティブをとるかとか、どこで自分が陰に回ってフォロー役になるか、ということを試しながらのデュオは、同一楽器同士ではとりわけ面白い。

デュオを3セット、セッションに参加してくれた新井田さん、小林さんそれぞれぞれを交えたトリオを2セット、ほとんど休みなく吹いたが、煮詰まることなく演奏できた。

即興演奏を始めて年月はさほど長く経ってはいない、ということだが、M☆A☆S☆Hの3人(大沼志朗さん、森順治さん、雨宮拓さん)に加わってのセッションを重ねているだけあって、(新井田さんも言っていたが)いろんなことの吸収が速い人なんだなと思った。また、名古屋に来てほしいものである。

齋藤+柳川