Review:After It’s Gone+S.Shahスティーブン@なんや

2019年11月5日(火) 名古屋・御器所 「なんや」

・柳川芳命(as) Meg Mazaki(ds) S.Shah.スティーブン(g)

Meg Mazakiさんとのデュオシリーズ“After It’s Gone”に、Blasting Rodのリーダーでギター・ボーカルなどで活動しているS.Shah.スティーブンさんを招いての全即興セッション。

Blasting Rodはヘヴィーでサイケデリックなロックバンドで、以前にはトランペットの長坂均さんとともにサックスでゲスト参加させてもらったことがある。そのときは、バンドのオリジナル曲にフリーキーなシャウトで吹かせてもらった。

今回は、エレクトリックではなくノーマイクのアコースティックギター、生サックス、生ドラムで演奏した。音量的にはアンプやPAで増幅していないので、エレキのようなわけにはいかないが、切れのいい(それでいて結構ボリュームのある)ギターの音はサックスやドラムの音に埋もれることなく際だっていた。

★1曲目 Meg+柳川

自分としては丁寧に演奏できた。長くデュオをやっているので自分の演奏の制御だけでなく、デュオとしての即興演奏の展開もふたりで連携しあって制御できた感じがする。一期一会のセッションであれば、どう展開していくのか模索しながらのスリリングな即興になるが、メンバー固定の即興演奏では、凝縮する精査された方向に向かうことになるのかな。それは悪いことではないと思っている。演奏に不安要素が無くなる分、あえて思い切ったことができる自在性が生まれる気がするからである。

★2曲目 スティーブン+柳川

生音のアコースティックギター1本、サックス1本という出来ることが制限され、ある意味逃げ場のない中で、いかに多彩な奏法を盛り込んで演奏を展開させるか、というのは挑戦である。特に日頃は様々なエフェクターを使ってのエレクトリックギターで演奏しているスティーブンさんにとっては、裸一貫・丸腰で臨むことになったと思う。しかも、ロックのイディオムに頼らないでフリーフォームの演奏をしていくのも挑戦であったことだろう。サックスのほうもギターの音量を考えながらの吹奏なので、奏法に制約がある中で自分のスタイルをどうやって出していくか、というのは挑戦であった。それでも約20分、行き詰ることなく即興が続いた。

★3曲目 スティーブン+Meg

微音のパーカッションから始まり、徐々にドラム演奏に移行。このセットではMegさんの4ビート、8ビートが新鮮で、スティーブンさんのギターも突破口が生まれ、徐々にヒートアップしたドライブ感のある熱い即興になった。

★4曲目 トリオ

2曲目、3曲目の演奏の様相がうまくブレンドされた感じ。ここではギターとドラムが共振し合う接近戦にもつれ込んでも、サックスがあえてそこに同調せず異質な演奏をして、不調和で違和感のある演奏を生み出していくことに面白さがあった。

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ラウドでアグレッシブな演奏でカタルシスを生み出すようなHyper FuetaicoやHeal Roughly の頃とは違った局面に出ようと始めたAfter It’s Goneのシリーズだが、そのための良い修行となった演奏会であったと思う。

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