Review:nagoya CROSSOVERS@spazio rita

2019年12月11日(水)名古屋・矢場町 spazio rita

party 1 どなん<マツダカズヒコ+タナカえん>

Party 2 神泉<柳川芳命+サイン加藤+Hyakuyoso>

Party 3 宮の華<みーやん+立山こずえ+Kaoru+浅井一男>

party 4 フリーセッション

会場のspazio ritaは、以前から気になっていたスペースだが、会場に入るのは初めてであった。大阪の「ゼロゲージ」の壁を真っ白にしたような感じで、広さも音の響きもよく似ている。ライブハウスというよりアートホールという感じで新鮮で良かった。何より残響の感じが管楽器奏者にはたまらなくいい。

今回の企画は、Hyakuyosoで出演のKoh Takahashiさんと、「海月の詩」のマスター浅井さんの共同でなされたものかと思うが、3つのステージとフリーセッションで構成されていて、各ステージに泡盛の名前が付けられているのも「海月の詩」らしい。全体のタイトルのクロスオーバーという語の響きには懐かしさを感じる。70年代半ばぐらいからジャズの世界で流行り出したジャンル名と記憶しているが、80年代に入るとなぜがフュージョンという言葉に変わり、なぜなんだろうと当時思ったものだ。たぶん海外で使われている言葉に日本の音楽業界が従ったのだろう。知らんけど・・・。この時代ぐらいから自分はフリージャズを主に聴いていたので、8,16ビートでシンセサイザーとか電気楽器の入るジャズにはほとんど興味が無かった。今回のクロスオーバーにはもう少し広義の意味で使われたのだろうと思う。すべてのステージに身体表現の入る編成だった。

<どなん>では、マツダ氏のギターソロを(長年共演してきたのだがソロを聴くのは初めて)堪能できた。ギターとしての奏法にプラスしてエフェクター類の操法で多彩さが際立っていたし、その音色が精錬されていて美しかった。タナカえんさんのダンスと奇矯な行為の間を行き来するようなパフォーマンスに、ホモサピエンス以前の生物の生命感が見えてくる。

自分が出演した<神泉>は、3人とも初共演の関係で、自分はHyakuyosoの電子音響も加藤さんの身体表現も全く予備知識無しで臨んだ。Hyakuyosoの持続音(これはいわゆるドローンというものなかな?)は、とうとうと流れる大河のように音の粒が我々を包み込む。羊水の音を聴く胎児の感覚とはこういうものなのだろうか?、次第に陶酔感に浸っていく。その中で微妙に変容していくサウンドに知らぬ間にこちらの感覚が制御されていく。サイン加藤さんの流動的な身体の動きは、そのままコンダクターとなってサックスの演奏をリードしていく。今回の演奏は、共演した二人によって誘発~制御されていった感じで、こういうのがいい共演の在り方なのかもしれないなと思った。

続く<宮の華>、この4人のかかわり方はとても面白かった。各自が自分の表現を貫徹している感じで、4つのソロの同時進行、あるいはコラージュのようで、安易な交わり方をしない。なので、演奏中4色の混ざった音ではなく、4つの色が最後まで鮮明なままで進行していく。バイオリンの淡々とした演奏、神秘的なガムランの響き、エレクトロニクスの異形の音塊、躍動感ある舞、それぞれの固有性が生かされるCROSSOVERだった。

Spazio Rita

写真はparty 2 <神泉> 撮影:野々山玲子姐