2019年12月27日(日)名古屋今池バレンタインドライブ
・三上寛 (vo/g) 本田珠也(ds) 柳川芳命(as)
あれは9月上旬だったと思う。大阪本町の「燈門」のマスター岸田コーイチさんからメッセージが来た。『12/27 バレンタインドライブで、三上寛、本田珠也 でいけますか? よろしくお願いします!』
わざわざ「!」マークまで付いたこの単刀直入な打診に、断るか受けるか数日戸惑う。三上さんとはすでにデュオで2回、本田さんとは、今年2月にペーターブロッツマン「マシンガン」の再演ライブで共演。共演と言っても大所帯のグループでドラムスもツインだったので、本田さんとやり合ったという実感は無かったし、そのときもほとんど会話してない。いずれにしてもビッグネームのお二人に、フリー即興でしかやっていない自分が混じって吹くというのは、自分のダメさが露呈するだろうと苦手意識が先行した。
過去2回、三上さんとやらせていただき、ある程度調性(おそらくEm)を踏まえ、ときにそこから破調の世界へと行き来する吹奏をやってみたが、このEmという指使いに実はあまり馴染んでいない。ポイントは左手の小指である。自分の演奏場面の写真を見るとたいてい左手の小指が立っていて、あまり小指君を役立てていない。EmやBmの曲では、左手の小指に大活躍してもらわないといけない。そこで最近は、極力左手小指君に主役を演じてもらうように心がけて即興をやってみると今までにないフレーズが出てきたりして、おお、これは新境地の開拓であるな、などと悦に入ったりしていた。
で、3回目の三上さんとの共演にしてようやく少しはサマになる吹奏になったか(それでも録音を聴き返すと気持ち悪い場面も多々ある)と思う。今回は、本田さんのドラムが入っていることで、デュオと違ってサックスが目立たなくて済むな、という逃げ場も救いだった。
本田さんがどんなドラミングで三上さんと絡むのかは自分の想像を超えていた。すごくきめ細かいビートというかパルスの流動のため、スピード感がただものでなく、そのうねりの大きさはマグマのごとし、であった。その渦に呑まれつつ、三上さんのギターと唄(それに語り)の情念の大波小波に浮き沈みしながら、気持ちよく吹くことができた。
終わってから本田さんに握手を求められ、ああ、ああいう演奏でもよかったんかな、と安堵した次第である。また、日頃ディスロケーションで叫んでばかりの吹奏しか聴いていない正文館の古田さんからは、「ああいう演奏もやるんやなあ」と言われた。まあ、いい経験をさせてもらった。こういう機会を与えてくれた「燈門」の岸田コーイチさんには感謝したい。