2020年1月13日(月・祝) 岐阜本郷町 KING BISCUIT
・河合渉(g)+Meg Mazaki(ds)+柳川芳命(as)
・出鱈目楽弾 <平居秀介・やちり(iPhone/sax) 近藤寛峰(ds) 慈鋭一(g) 小松バラバラ(咆哮)>
・Simple Men <佐藤シーゲル(bassVl) 大口辰雄(ds) 山田一雄(g) >
<河合+Meg+柳川>のトリオは昨年9月に『なんや』で初めて演奏したのだが、そのときの感触が良かったので、もう一度、今度は岐阜でやろうということになってこの企画が動き出した。対バンをいろいろ考えた中で、同じ岐阜に住むやちりさんにお願いし、<出鱈目楽弾>の出演が決まる。もう一コマは佐藤シゲルさん率いるバンド<Simple Men>にお願いした。
各バンド及び出演者の紹介は以下の通り。
【出鱈目楽弾】
平居・やちりが毎回ゲストを迎え、アメーバのように形を変える。 現在の玉手箱iPhoneを使い、最小の機材で最大の音空間を創造する。それは出鱈目で根源的なグルーブであり、インプロ、フリージャズ、ノイズ、パンク、ローファイなどジャンルを呑み込むマッドサイエンシストの作業である。
出鱈目楽弾は、流動的メンバーということで、咆哮の小松さんは初めての参加である。後のメンバーも初参加の人がいたかもしれない。バンドというよりは演奏集団という感じでカオス感が満載。各自が黙々と自分の音楽を展開していくのだが、演奏開始からある時点でバンド化する兆しが感じられ反応し合っていく。が、それも気まぐれに変異し、いろいろな様相を映し出しながら、5人の音が混然一体となって流れ出る。集団即興の一つの在り方して一石を投ずるものがあると思う。
【Simple Men】
2006年にベースの佐藤シーゲルのレコーディングユニットとしてスタート。その後ドラムの大口辰雄とのデュオとしてライブ活動を始める。幾多のメンバーチェンジを経て、2019年ギターの山田一雄が加入。
「解剖台上の作曲と即興の偶発的な出会いのように美しい」
Simple Menのソリッドでタイトなプレーヤー相互の結束感は聴いていて心地よい。インストのバンドとして安定感のある3人のインタープレイに、破調をきたす攻撃的な電子音が加わることで危険さ、斬新さ、不安定さが出てきて昂奮させられる。まさに作曲と即興の両面を渡り合いながら、どちらの軸足に重心を置くかによって展開がスリリングになっていく。いろいろな層から支持されるバンドではないかと思った。
【河合 渉】
1981~種の渦、宇宙エンジン、蜘蛛とハエ、等、94~UZU、魔術の庭、に在籍。近年は特に即興演奏を中心に活動。
【柳川芳命】
82年より名古屋を拠点に即興演奏を開始。91年渋谷ジァンジァンにてシリーズ『地と図』を開催。09年名古屋カルヴァドスにて『地と図』を再開し、16年まで月例即興セッションを100回開催。現在、Dislocation、Samadhi、NOUS、烏合の徒などのユニットや、Meg Mazaki、藤田亮、河合渉、木全摩子とのデュオ、平松千恵子・Meg Mazakiとの「怪談と即興音楽」などを継続しつつ、各地の即興表現者と共演。
【Meg Mazaki】
柳川芳命との第3期デュオシリーズ ‘After It’s Gone、滋賀の即興集団「隣人」<宮部らぐの(g) 小松バラバラ(咆哮) 吉川吉木(b)>、京都発の楽曲を持たないロックバンド’MUK'<take-bow(g) kei-k(as)>、デュオではtake-bowとの’MU’、小松バラバラとの「別人」などで活動。 平松千恵子(語り)・柳川との「怪談と即興音楽」シリーズでは、パーカッションにも挑戦。 滋賀大津tioでの 即興セッションにて 柳川と共にホストを務める。
最後の<河合+Meg+柳川>のトリオだが、河合-柳川ライン、Megー柳川ラインはそれぞれ演奏歴も長く、カラーも出来上がっている。河合-Megは今回まだ2度目の共演なのだが、演奏行為の上で抱えている<暗さ>というか<重さ>というか、<闇具合い(病み具合?)>が、どこかつながって共鳴し合うところがあるようだ。この日の演奏でも、河合さんがエレアコギターの弦を弓でこすり、持続音を出し始めたころから、<闇具合い>のチューニングが合ってきたようで、まるで「黄泉の国」に堕ちていくような演奏になった。この何というか70年代アングラ感こそが、この3人の心のふるさとなのだろうか? いや、3人の中で70年代にどっぷり浸っているのは自分だけか・・・。ふたりは自分より若い、ちょっとだけ。