■1月18日(土) (岐阜徹明町) パノニカ
・照内央晴(p) + Meg Mazaki(ds) + 柳川芳命(as) ゲスト:渡辺敦(ts)
岐阜ではこれまで「ゴーストV」でこのトリオの演奏をさせてもらってきたが、グランドピアノのある「洋食屋パノニカ」で今回はやらせてもらった。ピアノ、ドラムス、サックス(アルト、テナーの2本)のそれぞれの音量のバランスがいい按排になるように、ピアノの位置や向き、ドラムセットの位置や向きにこだわりながらセッティングする。ドラムセットもジャズ向きで、歯切れのよい音が出るし、グランドピアノも深い響きが出て良かった。サックスはアルトとテナーのどちらもマイク無しの生音で十分通り、全体的に良好な音響スペースで演奏できた。
3日間のミニツアー初日で、リハもほとんどせず(そのかわりに店の焼きそばとピザの味を堪能していたな・・・)、いきなりトリオでファーストセットを始める。微音から始まり、クライマックス場面では、かなりオーバーブロウする。ダイナミズムの幅の大きい約30分の全即興だった。
セカンドステージには渡辺さんに入ってもらう。彼の深い奥行きと品格のあるテナーサウンドがリリシズムを醸し出していた。最後に4人で演奏したが、アルト、テナーの2本のサックスも互いに際立つよう気遣いつつ整然とした集団即興になった。渡辺さんと照内さん、Megさんとはこの日初対面・初共演だったが、すっかり馴染み切った感じで、違和感なく溶け込んでいた。
■1月19日(日)(滋賀近江八幡)サケデリックスペース酒游舘
・照内央晴(p) + Meg Mazaki(ds) + 柳川芳命(as) ゲスト:松原臨(ss)
・ナカタニタツヤ(ds/per)ソロ
・交流セッション
ここでも、グランドピアノを一番良い響きが出る位置に置き、ナカタニさん、Megさんそれぞれの打楽器セットをどのように並べると良いかをいろいろ検討した。結果、これまでの酒游舘でのステージ設営の配置を改め、横に広く楽器が置けるように向きを90度変えてステージと客席を設営した。そのことによってお互いの楽器の音が聴きやすくなり、残響も短くなった気がする。
このライブの日のちょっと前に、松原さんにソプラノサックスでゲスト参加してもらうことを要請した。
まずは照内・柳川・Megのトリオで演奏。広い酒游舘のスペースで存分に音を響かせることができた。生音ながら照内さんのピアノもパワフルに響いていた。続いて松原・照内・Megのトリオで始め途中からアルトが入る。カルテットになってからの約20分のコンパクトな演奏は、それぞれの楽器の存在感を生かし合えた起伏のある即興演奏になった。
ナカタニさんのソロは、打楽器でありながら電子音響のようなサウンドが不思議なことに会場のいろいろな角度から聴こえてきて、パーカッションソロのイメージを超えたものであった。3枚のドラが共鳴するように配置がされていて、様々な音が次々と湧き出て、重なり合っていく。音だけを聴いていたら、どんな楽器をどんなふうに鳴らしているのか見当がつかないだろう。その展開の速さたるや、聴く者に全く飽きる暇を与えない見事な疾走ぶりだった。
最後、ナカタニさんと1対1で約7分ずつデュオを行う。それぞれのプレーヤーのアプローチに個性が出て面白かったし、それに応じたナカタニさんの豊富なバリエーションの演奏行為も見事だった。
■1月20日(月)(名古屋今池) 海月の詩
・照内央晴(p) + Meg Mazaki(ds) + 柳川芳命(as)
・セッション: Kani Kiyoshi(as)、後藤宏光(電気三線) 月姫うさぎ(法螺貝) 浅井一男(p)
最終日は、名古屋の「海月の詩」で自由参加のセッション付きで演奏会を行う。同じビルで隣のライブハウス「パラダイスカフェ」で女性ボーカルのバンドのライブがあり、音量の面ではいくらかセーブする必要があった。(まあ、もともとアップライトピアノの生音との共演なので、ドラムもサックスも音量的バランスを考慮して演奏することはわきまえてはいたが・・・。)「パノニカ」「酒游舘」でやったような、ピーク時にはパワー過剰な演奏にはならないようなアプローチをする必要はあった。
隣の店のライブのことも考え、第1部は照内さんのピアノソロを行う。とても良かった。1音1音丁寧に音を紡いでいき、沈黙も大事な演奏の要素にして展開していく精神性の高いソロだった。
第2部は、サックスとピアノのデュオ。これもかなり息をセーブして吹いてみた。抑えた演奏は、発散・爆発する演奏よりはるかに疲れる。サックスの吹奏技術の面でも、ピアニッシモで納得いく音を出すのは高度なことだ。
第3部は、隣のライブの終了時間を見込んで、ドラムとピアノのデュオ、途中からサックスが入ったトリオで、音量セーブを解禁して演奏する。ドラムも音量を抑えるため、通常のスティックを封印し、マレット、ブラシ、菜箸を使った。結構繊細な響きのドラム演奏になり、ピアノとの絡みも面白かった。ボイスも加えたりしてドラムセットの鳴らし方として新しいアプローチが生み出せたのではないだろうか。
アフターセッションでは、アルトサックスのKani Kiyoshiさん、三線にエフェクターやアンプを通して演奏をした後藤宏光さん、法螺貝と格闘した月姫うさぎさん、厨房から躍り出てピアノの鍵盤をこね出したマスター浅井一男さんが加わる。一般的社会通念では混沌・カオス・出鱈目の合奏と思われるのだろうが、長年こういうことをやっていると実に心地よい音楽として受け入れられる。慣れとは恐ろしいものだ。セッションの終盤には、おもちゃの豚の一瞬にしてシリアスな雰囲気を軟化させるボイスも登場し、参加者皆笑顔でエンディングを迎えた。