Review:小野浩輝+MegMazaki+柳川芳命@海月の詩

2020年2月24日 名古屋・今池 「海月の詩」

・小野浩輝(electronics)     Meg Mazaki(ds)     柳川芳命(as)

柳川+Megのデュオシリーズ「After It’s Gone」の武者修行として、今回は名古屋エレクトロニクス奏者の雄、小野浩輝さんを迎える。

彼が小埜涼子さんたちと「学生実験室」というユニットを始めたのは20世紀末だったか?対バンとしての初共演したのもその頃か21世紀初頭だったと記憶している。なので小野さんはエレクトロニクスの世界では経歴も長いし、その実績もある。かつては名古屋即興界の若手の存在と認識していたのだが、彼も今や40代後半の脂の乗り切った頃である。心技体が一番バランスのとれた時期かなと思う。

柳川+Meg+小野という組み合わせは2017年の夏に一度やったのだが、そのときの手ごたえが忘れられず、以来いつかまたこの3人でやりたいという思いを温存してきた。Megさんも小野さんの持つセンスと技量に魅了をされていたのだろう、ぜひともまたやってみたいという思いを随分前からもっていた。ようやく2年半たってそれが実現できたという次第である。

小野さんのエレクトロニクス演奏は、とてもフィジカルで躍動感がある。アイデア先行の観念的なプレイではない。アグレッシブで疾走感と破壊力がある。それに信念をもって自分の音を出していく姿勢が感じられ、一緒に演奏するうえでとても信頼感や共感が得られる。

ファーストステージはとりあえず3人でやる。スピード感においてしのぎを削る演奏になる。短距離走でマラソンをするがごとく26分ほど疾走。演奏している自分を客観的にとらえる暇などない。とにかく次の音にどう繋いでいくか、それしかない。しかし、不思議に疲労感が無く、爽快感の中で音の放出ができた。ここまで突っ走れば本望である。

セカンドステージは短めのデュオを3通りおこなう。短めと言っても5~6分。自分のすべてを凝縮して出し切るには適切な時間かと思う。①Meg+柳川 ②柳川+小野 ③小野+Meg とバトンをつなぎ、③が終わって一息ついて3人で演奏。トータルで30分ほどのステージとなった。ワンステージ30分は短いのかもしれないが、その濃度は高かったと思う。

収束か拡散か?と言えば収束。硬か軟か?言えば硬、アッパー系かダウナー系かと言われればアッパー系。いつの時代も若者はパワーとスピードに熱狂する。まさにその本性を40代、60代の人間が引きずって身を削って演奏する。それも悪くない。パワーとスピードに熱狂するのは若者だけの特権ではないのだ。

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