2020年2月28日(金)名古屋\今池 バレンタインドライブ
野々山玲子・小宮勝昭・丸市・近坂祐吾(drums) 野口UFO義徳(djembe)
臼井康浩・マツダカズヒコ(guitar) 鈴木茂流・佐藤シゲル(bass)
柳川芳命(sax)
野々山玲子さん主宰で【グルーブするインプロビゼーション】をテーマにしたシリーズ。今回で5回目になる。個人的には今回を含めて3回出演させてもらった。東京のドラマ―の小宮勝昭さんを継続的なゲストにして行っているこのシリーズでは、中部地区の個性的な打楽器奏者が何人か(今回は4人)出演し、そのリズム、ビートへのアプローチの多様さを楽しめる企画でもある。
野々山さん熟考でメンバーを組み合わせ、4つのセットのトリオまたはカルテットのインプロビゼーションを行った。
1st Set:臼井+柳川+野々山
3人での演奏は今回初めて。自分としては、裏も表も無くオープンな心構えで臨めた気がする。二人の演奏の流れに身を委ねていけば、やっているうちに何か閃きを得るだろう、という信頼感のようなものに支えられて気負いも無く、不安も無く吹奏できた。それぞれが適度な距離感を保って自分の演奏をしつつも共有するところを捉えながら演奏ができたと思う。
2nd Set:佐藤+近坂+マツダ
この3者の他者とのかかわり方がとても面白かった。脱構築型というか、迎合への拒否というか、どこかズレている。どこかハズレている。誰かはみ出している。という感じ。ときに3者がそれぞれのペースで自立した演奏をし、共演者に無頓着になって演奏する(おそらくそれは意図的にそうしているのだろう)場面のアナーキーさがとても魅力だった。集団で何かを創り上げるため個人が貢献する、という全体主義的な発想ではないアンサンブルだった気がする。
3rd Set : 鈴木+丸市+野口
これは2ndのトリオのかかわり方とは逆方向で面白かった。それぞれが噛み合うなにかを探りながら、意見を述べ合い、徐々にコンセンサスを形成し、最後には共同声明に至る、という理想的議論の経過を見るようだった。事前に決め事を打ち合わせておいて演奏を始めれば、すぐにでも合意形成に至れるが、あえてそれをせず、白紙の状態で向き合って演奏を始めていったところに、この即興演奏の価値があると思った。見事な意見の「すり合わせ」だった。政治家の議論もこうであって欲しい。
4th Set : 小宮+マツダ+臼井+柳川
実力派ドラマ―に、スタイルの異なるギタリストふたりとの共演である。臼井さんとマツダさんが一緒のグループで演奏するというのもレアなケースで、野々山さんは2種類の劇薬を混ぜたらどうなるか?という好奇心からこの二人を組み合わせたのだろうか???
「船頭多くして舟 山に登る」というコトワザのように、4人それぞれが激しく自己主張すると、舟も航路を見失い山に登ってしまう。3人なら何とかなるが4人となるとそのリスクがさらに高くなる。この4人でバンドを組んだらすぐに解散するかも・・・。などと演奏する前は考えていたが、やってみたら皆オトナであった。そのあたりをわきまえながら、出るところ引くところを考え合っての集団即興になった気がする。個人的には4人での集団即興はかなり難度が高いな、ということを感じた。それは自分の耳の未熟さから起こる難かしさである。集団即興は自分の喋ることを考えながら喋り、まったく同時に他人の喋っていることを聴き分けていくわけである。実際は、聴きそびれていることも多々ある。自分以外の3人(しかもその中に同楽器奏者が2人いる)の音を聴くリスニング能力はまだまだである。そのことを実感した。だが、演奏中は別に苦痛は無く心地よかった。きっと調子に乗って吹いていたのだろう。
共演していただいた皆さん、まったく個人的なことを言っております。どうかたわごとと思ってお気を悪くされませんように。