2020年3月9日(月)Stoo Odom 2020 Japan Solo Tour in Nagoya
名古屋・庄内通 Casa de la Luna
・S.Shah スティーブン ソロ
・The Direct Opposite
・Samadhi <鈴木茂流el-b マツダカズヒコg 柳川芳命sax>
メインのStoo Odom(contrabass)さんが、体調不良のためツアーが中止となり、上記3つの出し物でこの日のイベントはが進行した。
このCasa de la Lunaという初めて演奏する店は、外観は普通の住宅である。ナビゲーションで住所を打ち込んでそれを頼りに向かったのだが、「まもなく目的地に到着です。案内を終了します。」とアナウンスされても、ライブハウスらしい建物は見当たらない。おそらくは、日暮れ前であれば見逃すような店である。防音設備はさほどされてなく、表の道路に面した1階なので、かなり外へ音が聴こえていると思われるが、曜日によってはドラムセットを使用してもトラブルは無いそうだ。周囲に空き家が多いからかもしれない。
入口のガラス戸を開けた時に思わず「ごめんください」と言いそうになる。室内にはいろいろなデコレーションはされているものの、造りは普通の家である。目を楽しませる物がいたるところに展示されていて、客席にはくつろげるソファーもある。演奏場所には靴を脱いで上がる。板の間にカーペットが敷かれたスペースに、アンプやPAスピーカーが置かれていている。座る、寝そべる、転がるなど随意にできる。高校生の頃、友達の家に楽器を持って集まって練習したときの思い出がよぎる。
最初に、スティーブンが生ギター、ボーカルで演奏。バックにインド風(?)の持続音が流れ、瞑想的、内観的、鎮静的な音世界に浸る。スティーブンさんの創る音楽は多彩であるなあ・・。この店の室内環境にふさわしく、くつろぎや安らぎを与えてくれた。
続く、ダイレクト・オポジットは初めて聴くギター二重奏のユニットである。たぶん齢は息子ぐらいの若者であろう。電気ギターを使っていたがサウンドはアコースティック風で、歪み系ではなく透明感があり清涼で、これまた聴いていて安らぎが得られた。
メインのストゥー・オドムさんのステージが無くなったので時間的なゆとりができ、結局サマーディがトリを務めることになる。個人的な反省なのだが、これまでの演奏とは趣の異なる演奏が自分は出来た気がする。違うと言われても聴いている人は気づかないだろうと思うが、自分の意識の流れと、演奏の展開のスピードがうまく一致したという実感があったのである。一つの演奏シーンを十分描き切ってから、次のシーンに移行していく展開だった。(これまでは、実際の演奏より自分の意識が先走っていて、一つのことをまだ喋り切っていないうちから次の言葉が浮かんできて、それを喋ってしまうようなところがあって、良くないなあと思うことが結構あった。今流れている時間に浸りきって演奏していない、という問題である。)なので、この日の演奏ではマツダさんのギター、鈴木さんのベースとの一体感を味わいながら(それを楽しみながら)吹奏できた気がする。
要するに、落ち着いた精神状態で演奏できたのである。なぜそういう状態で演奏できたか?いろいろ考えてみたが、一つは演奏スペースの環境、3人の立ち位置(この日、自分はマツダ氏、鈴木氏より後方に立った。普段はサックスがギターアンプ、ベースアンプの位置より前方に立って吹くことばかりである。)二つ目は、自分たちの出番までの2つのバンドの演奏内容。勿論、こういう外面的な影響だけでなく内面的な要因もあったのだろう。しかし、それが何だったのかはよくわからない。
昔、福島のネガという店で金田さんというサックス奏者に呼ばれてデュオをやったことがある。90年代の初めの頃である。その金田さんは高木元輝さんと親しく、高木さんから音楽やサックスを学んでいる人だった。金田さんが近く柳川と共演することを高木さんに話したところ、高木さんが「柳川さんは演奏が速いからね、ゆっくり吹けばいいよ。」と金田さんに助言されたそうだ。確かに、あの頃は時間を詰めて詰めて、先走った演奏をしていたと思う。物理的なスピードのことではなく、意識のスピードのことである。
演奏中に流れている時間に、自分の意識の流れの速さチューニングするということが今の課題かなあ・・・。これは精神修養を要することだな。