■2020年3月14日(土) 東京・入谷 なってるハウス
・After I’ts Gone<柳川芳命as Meg Mazaki ds>
・日本天狗党<赤木飛夫as 鈴木放屁ts 赤木憲一ds>
■2020年3月15日(日) 東京・阿佐ヶ谷 イエローヴィジョン
上記メンバーに時岡秀雄ts がゲスト出演
日本天狗党を秋に中部・関西に呼び、柳川+Megデュオが2~3月に東京に出向く、というパターンが定着しつつある。今年は新型コロナウイルス感染のパンデミック宣言直後に、なってるハウスとイエローヴィジョンで合同演奏会を行うことになった。勿論計画の時点では予測できなかった事態である。お客さんは集まるだろうかという不安は、別にこういった状況に関わらず我々のような音楽をやっている者にとっては慣れっこなので、特に気にはしなかった。しかし、意外にも両日とも7~8人のお客さんが集まってくれた。とくに14日は冷たい風の中雪混じりの雨が降り、真冬に舞い戻ったような天候だったにもかかわらず、である。つくづくありがたいことだと思った。
14日(土)なってるハウスにて
天狗党の昨今のパワーアップぶりが凄い。昔々、アルトの赤木さんが「俺たちも〇〇代になったら、いい演奏になると思う」と言っていたのを思い出した。〇〇には40が当てはまるのか50が当てはまるのか忘れてしまったが、60ではなかったはずである。しかし、60代になって(自分は20代の頃の日本天狗党からずっと聴いているのだが)、これまで以上の熱量が放出される演奏になるとは誰も予想しなかったろう。メンバー一人一人の音圧や切れ味がだんだん凄くなっていくなと思った。怪物バンドである。
After It’s Goneは、柳川+Megデュオのシリーズで、Megさんの腰痛から復帰後の時期から始めた第3段階のものである。Hyperなデュオから始まり、RoughlyにHealするデュオ、その後は、二人の音の残響とか余韻とか間というものを意識した演奏にしようとは思っている。今回はNY在住のナカタニタツヤさん製作のパーカッション用の弓を手に入れたMegさんが、シンバルを擦るという試みも交え、静と動、弱と強、疎と密、緩と急・・・といういろいろな対比を織り交ぜることでデュオに奥行きと言うか立体感をもたせたいと思っている。果たして聴いてくださった人は、そういうものを感じ取れただろうか? 少しずつではあるが、手ごたえが蓄積されてきたと思うのだが・・・。
この後、赤木憲一さんのドラムと柳川のデュオで始め、赤木飛夫さん、鈴木放屁さんのサックスが徐々に加わり3サックス1ドラムのセッションを行った。爽快である。いろいろなタイプやムードの集団即興があるが、やはりカタルシスを味わってもらえる演奏、琴線を刺激する演奏を自分はやっていきたい。勿論、多様さがあってこそのフリーインプロビゼーションなので、それを万人に押し付ける気は無い。こういう暑苦しい音楽、情緒に迫る音楽は嫌という人もいるであろう。それも受容したい。
15日(日)イエローヴィジョンにて
この日は、テナーの時岡秀雄さんがゲスト参加。<日本天狗党+時岡秀雄>の演奏はもう何回か行われている。時岡さんと言えば、AーMusikのアルバムの中の1曲目「不屈の民」でアルトを吹いているが、何度繰り返してそれを聴いてもいっこうに飽きることがなく、聴くたびに高揚感が得られる。名演であると思っている。その後、吉野大作とプロスティチュートでのテナーもよく聴いた。これまで生で時岡さんの音を聴く機会が無かったが、この日ようやく聴け、共演もできた。感激である。
最初のステージは日本天狗党+時岡秀雄。3サックスの絡みは混沌としていながら、3者3様の音が明確に聴き分けられ、多彩なアクションペインティングを観るようで圧巻だった。
続いて柳川+Megデュオ。昨日の今日ということもあり、予定調和にならないよう音の重ね方にひねりを加えてみた(つもり)。が、そういうアプローチをしても戸惑い無く、演奏はスムースに流れていく。こういうのは積み上げの成果とも言えるが、聴きに来てくれたテナーのY氏の感想にもあったように、「出来上がりすぎ感」もあるかもしれない。創造と破壊の繰り返しにターミナルは無いだろうなあ。
最後に、デュオに時岡さんを交えてトリオで演奏。我々のデュオをずっと聴いた上での時岡さんのアプローチは、デュオには全く出てこないであろう意表を突くリズミックなフレーズでの切り込みだった。おかげでデュオのときとは色合いの違う演奏になった。さすがであるなあ・・・、引き出しが多い。脱帽である。