2020年3月19日(木) 京都・熊野神社 Zac Baran old new
・NOUS <柳川芳命/as 菊池行記/electronics 小林雅典/el-g>
・MUK <take-Bow/el-g Kei-K/as Meg Mazaki/ds>
NOUSとMUKの2つのバンドによる演奏会は、去る2月13日に名古屋の『海月の詩』ですでに行ったのだが、このときはNOUSの菊池さん(エレクトロニクス)が参加できず、NOUSマイナス1ということで、小林さんと柳川のデュオで出演した。今回は、NOUSフルメンバーでの出場である。昨年秋のバンド結成からまだ3回目の生演奏に対し、京都のMUKの3人はバンド歴は長い。
最初にNOUSが演奏する。菊池さんの機材(よくわからないが、ラップトップ、タブレット、小さいキーボード・・・)が、店のPAと相性が良いかどうかが結構重要なカギになる。何とかモノラルで対応し、十分な音量が保障できた。小林さんのギターがクリアでシャープな音色で切り込んでくるストラテジーに対し、菊池さんの電子音響は、周囲から水攻め、火責めで侵攻してくるストラテジーのように感じた。知らぬ間に音の渦に包囲されているような感じ。勿論それはときに逆転することもあり、小林さんがアンビエントに忍び寄り、菊池さんから意表を突くグロテスクな音塊が放射されることもある。サックスやギターの出せる音響が限界あるのに対して、エレクトロニクスの音響からは、無限(とまでは言えないかもしれないが)の音色のパレットが備わっているため、3人のアンサンブルも多様に七変化する面白さがある。
次に、交流セッションを2つ行う。一つ目はTake-BowさんとMegさんのデュオMUに、菊地さんが加わったトリオ。初顔合わせである。トータル25分程の演奏のうち、10分ほど経過したころに3人の音が接近戦になり、ボルテージが上がってストーム状態になる。エキサイティングなアンサンブルになった。
二つ目は、小林さん、柳川、Take-Bowさんによる2ギター1サックスのトリオ。以前に小林さんとTake-Bowさんのデュオを聴いたが、大変面白い対局だったという印象がある。お互いに鋭い音で多彩な技を仕掛け合うのは、聴いていて飽きることなく知らぬまに惹きこまれていく。3人でやってみて大変満足いく演奏が出来たと思っている。約15分程の短めな演奏は、間延びすること無く、凝縮された音の絡み合いが終始持続した。
最後にMUKが演奏。イントロダクションのアルトの鋭い咆哮が出だしからクライマックスを誘発する。Kei-Kさんのアルトの硬く、鋭く、明るい音色が冴えていたな。いろいろなサウンドシーンをTake-Bowさんのギターが創り出し、多彩なアンサンブルを導いていた。両者へのMegさんの対置、レスポンスの速さにしなやかさがあって、カオスの泥沼に落ち込むことなく、全体的に「美しさ」があった。いいバンドだと推したい。今のところ京都中心での活動だが、関東にも進出して欲しいものである。