2020年5月31日 大阪・梅田 梅田ALWAYS 『~迷い込め~即興の森 2020』
山嶋真由美・小柳淳子・宮藤晃妃・杉山千絵・ 山添ゆか/vocal
島嵜隆太/beatboxer Charhan/performancer 奈倉翔/violin
市瀬由紀/flute 登敬三・柳川芳命・里村稔/sax
高田亮介/guitar 名倉学・小場真由美・荒田健司/piano
山本久生・佐々木善暁/bass 鈴木泰徳/drums
昨年に引き続き、主宰の鈴木泰徳さんの計らいで2度目の参加をさせてもらった。出演者は昨年と一部変わっているようだが、顔馴染みの人も出来て今年は幾分リラックスして臨めた。くじ引きによって今年はピアノ・キーボード奏者の名倉学さんと共演。初共演どころか初対面で25分間の枠の中でいきなり即興演奏を行う。
お互いに普段どんな演奏をしているのかという予備知識が無い中で、一緒に音を重ね合うというのは緊張感もあるが、そういう状況下で自分に何が出来るのかを試せる期待感もある。空中分解する不安は無い。それは楽器をちゃんと制御できる人とやるからで、音で何らかの意思交換が出来るはずだと信じているからである。(ただし誤解はつきものだが・・・)
単音旋律楽器のサックスは、音を繋げれば旋律になる。運指によっては調性が感じられる音楽になる。ピアノも旋律が弾ける楽器であるので、それぞれの旋律の重なり方によっては不快で違和感のある音楽になってしまう。自分はフリーフォームでやってきたので、感覚がマヒしていて不快も違和感もあまり感じないほうだが、すべての人がそうであろうはずがない。自分もときには明らかにこのズレ方はおかしい、よくない、気持ち悪い、と思うこともある。
ところが名倉さんは、サックスがどんな旋律を出そうがそれを受け止めてピアノの音を重ねてくれる。聴いてくださっていた方はどう感じたかわからないが、自分の感覚でいえば「合っていた」と思っている。まあ、オーネットコールマンとかドルフィーのようなジャズを聴いてきたので、たとえ調から外れている音が出ても美しいハーモニーと思ってしまうのだが・・・。あとでライブ配信された動画を見ると、名倉さんはほとんど目をつぶって吹いている自分のほうを見ながらピアノを弾いておられる場面がよくあり、ああ、私の好き勝手な吹奏を誠意をもって受け止めてくださったんだな、と思った。
そういうわけで気持ち良く調子に乗って吹いていたのだが、20分程して名倉さんのほうから『もう終わりましょうよ』という明確な意思のフレーズが出されたので、瞬時に『ここで一緒に終わらないと泥沼のように演奏が続き、終われなくなる』と判断し、一緒にエンディングを迎えることができた。それは聴いていた方々にも明確にわかったようで、即座に拍手と歓声が聴こえた。演者・観者ともに『無事に着地出来て良かったな』という安堵を共有できたのであろう。この素晴らしい一体感。
さすがジャズで磨き上げたインプロバイザーたちである。これは譜面があるか事前に打ち合わせをしたのではないか?と思えるようなデュオも聴かれ、ジャズという共通言語をマスターすればこのような技ができるのかと感心した。ジャズとあまり縁がなくジャズをまともに演奏できない自分も仲間に入れてもらえているようで楽しく過ごせた。
鈴木泰徳さん、今年もありがとうございました。下の写真は、前田祥治さん撮影のを拝借しました。感謝!