Review:OTOMAI@酒游舘

2020年5月30日 滋賀・近江八幡 サケデリックスペース酒游舘

・蛇香<千馬木/ds    Yuma/vo,dance   古川真穂/vo,gt     牧瀬敏/per>

・今貂子/舞踏     柳川芳命/as    Meg Mazaki/ds,per

約二か月ぶりの演奏会である。このイベントを酒游舘で実施しようと目論んだのは幸運だった。木造酒蔵の構造、バレーボールコートほどある収容人数120人というスペースは三密を回避できる。

ユニット<蛇香>による無国籍でグローバルなダンスと音楽のミクスチャーは、これまでの自粛期間の「もや」を吹き飛ばすような生命感に溢れていた。<異なるもの>のように思える要素がブレンドされることによって、弁証法のように止揚された新たなものが生まれる。この発想、試み、編集が魅力的なショーだった。

今貂子さんと初共演する柳川+Meg Mazakiのデュオ<AFTER IT’S GONE>は、自粛期間中に20日間ほど行った<一日一作の自宅録音ソロのオーバーダビング作業>の成果を生かせたと思う。この試みにはライブのような即興の相互作用を期待することは出来ないが、

・相手から送られた音源を事前に聴かないでぶっつけ本番で音を被せ、録音のやり直しをせず一回性に徹することで即興性を可能な限り生かす。

・自宅で演奏・録音することの制約(Megさんはドラムセットを用いず、小物パーカッションなどで演奏)を逆に利用して、過剰に音を撒き散らさないで音数を精選し、音量も極力抑えたミニマルな表現を開拓する。

という趣旨で行った。特に後者の取り組みが今回のライブに生かせたと思う。とりわけMegさんの表現の幅がぐっと広がった。

今貂子さんが登場すると、その存在だけで時空が支配され空気が一変する。<静>と<動>の交錯から生まれるダイナミズムや、身体の部分すべてを舞わせ魅せる舞踏は、観る者の緊張感と集中力を持続させ、一瞬たりとも目を離せなくなる。その動きから、即興演奏の次の展開に閃きと導きを与えていただき、40分間まったく緩むことなく演奏できた。

終わったときの22人のお客さんの温かい歓声に成就感が得られたイベントだった。お声をかけてくださった蛇香の千馬木さんには心から感謝したい。

下記の写真の蛇香とAFTER IT’S GONEのものはTeru Koikeさん撮影。今貂子さんが写っているものは辻村耕司さん撮影。

OTOMAI