Review:晩譚(野道幸次+柳川芳命)@インテルサット

2020年7月3日(金)愛知県西尾市吉良町 Jazz Intelsat (インテルサット)

・野道幸次(ts)    柳川芳命(as)

新型コロナウイルス感染拡大防止のための緊急事態宣言が発令される前の3月末に、このサックスデュオで名古屋今池『海月の詩』(5月末に惜しまれつつ閉店)で演奏会を行い、その録音をCD『晩譚』としてリリースした。今回は、その発売記念を兼ねて行ったものである。インテルサットはもう2年半ぐらい前に出て以来で、久しぶりの出演であった。

まだコロナウイルス感染の終息と言い切れない時期である。また、この夜は風雨が強く、熊本・鹿児島では大変な災害になった夜で、愛知県南部でも雨脚が強かった。人々が外出をためらう夜に、曲もテーマも無いおっさん二人によるサックスだけの全即興のライブにお越しくださった数名のお客様には、心より感謝せねばなるまい。

こういう時に限っていい演奏が出来るもので、この日のデュオ7曲はCDに納められた曲を凌ぐ出来だったと思う。ノー・マイクでの演奏だったが、ここインテルサットの響きはとても心地よい。輪郭がはっきりした乾いた音で、キレが良かった。

野道さんとのデュオでは、<忖度無し><追従無し>、ただし<しっかり相手の音は聴き尊重する>という、フリーインプロヴィゼーションでは理想的な構えで臨むことができる。忖度無し、追従無しと言っても、反発し合ったり潰しにかかったりするわけではなく、演奏の流れの中で、ときには歩み寄り、同じようなことをすることもある。そういう判断・選択も自由自在なのである。

アルトとテナーの違いはあれども、同じサックス同士なので、その奏法・音色の開発というか実験的な試みは、他の楽器との共演以上に色濃く即興演奏に反映される。いかにサックスらしい聴く人の心を溶かすような音を出すか、いかにサックスらしくない奇異で刺激的な音を出すか、そういう課題もサックス同士ならではのものである。いわゆる管弦打そろったジャズやロックにありがちなバンド編成にはない面白さがあると思うのだが、そういった編成の面白さを堪能するのは、まだまだマニアックなリスナーに限られているのが残念である。

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写真はお客様のAsaokaさん。決して「無断撮影」ではありません。