Review:怪談と即興音楽2020『真景累ケ淵』

・2020年6月20日(土)滋賀・大津 Baar Musica TIO

・2020年6月25日(木)愛知・名古屋 TOKUZO

・2020年7月11日(土)滋賀・近江八幡 酒游舘

平松千恵子(語り) 柳川芳命(as, ocarina, harmonica) Meg Mazaki(ds, per)

Season Ⅰ:18年夏の小泉八雲「因果話」「葬られた秘密」「破られた約束」の三話と「袈裟と盛遠 文覚発心譚」、Season Ⅱ:同年冬の「忠臣蔵~四谷怪談」、Season Ⅲ:19年夏の「貉(むじな)」「牡丹灯籠(お札剥がし)」、Season Ⅳ:同年冬の「牡丹灯籠(仇討)」に続くシリーズ企画である。今回、Season Ⅴの演目は「真景累ケ淵」。

Ⅰ~Ⅳまでは、即興音楽と言っても、シナリオの中で音を入れるシーンをあらかじめ決め(必ずしも決めたとおりにやってはいないが・・・)、どんな楽器を使うかも事前に考えてステージに臨んだ。Meg Mazakiさんが音を出す場面、どんな楽器(ドラムやそれに使用するスティック、パーカッション等)を用いるかもだいたい理解した上で演奏した。

今回は、その枠組みを外し、演奏のみの場面はあらかじめシナリオ上で6場面決めておくが、語りの場面では、私もMegさんも即興で自由に音を被せるという方法をとった。そうした理由は、予定調和的な演奏にならないようにして、より即興性を重視したいということが一つ。もう一つは、語りの合間合間に演奏を入れることで、語りの流れを堰き止めないようにしたいという理由である。結果的に、次に起こること(音を被せることに関して)を予測できない状況の中での演奏になり(胸を張って)「即興音楽です!」と言えるようになったという次第である。今回は3会場(大津のTIOでは入場人数を制限し、動画配信テストを兼ねた「公開リハーサル」であった。)で公演を行ったが、音楽に関してはその都度変容していった。自分の台本にも、前回はどこで演奏を入れたかというメモを残さないようにして、毎回白紙の状態で臨むようにした。公演から公演までの日数の間隔も、前やったことを忘却できて適度であった。

なるべくパターン化しないようにしたい、繰り返すことや一度どやったことをなぞることを出来るだけしたくないという気持ちは、フリー・インプロビゼーションをやる以上、ずっと持ち続けたいと思っている。

さて、怪談の演目のほうはだんだん長編になり、ストーリーや登場人物の絡みが複雑になっていく。単に怖い場面を音でどう演出するか?にとどまらず、人物の心境の動きを音でどう表すか?という難しい課題に直面せざるを得なくなった。効果音としての演奏から、音色や旋律で心の内を映し出す演奏へ・・・、この企画は自分にとって永遠のTASKを与えるものである。

Tio

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とくぞう