2020年7月16日(木) 名古屋・御器所なんや
纐纈雅代(ts) 小埜涼子(as) 柳川芳命(ss,as)
70年代から名古屋には「七味唐辛子」という企画集団があった。自分も20代の頃ヨーロッパのフリー系の人たちの来日コンサートなどが名古屋で開催されると観に行ったものだが、たいていはこの「七味唐辛子」による企画だった気がする。そのメンバーの中で当時一番若かった千葉一巳さんが、今でも(昨年還暦を迎えられた)名古屋で活動する奏者を絡ませて、いろいろ著名なミュージシャンを招いた企画を打ち立ててくれている。
今回のこの3人のサックス奏者のライブも、千葉さんからのお誘いで実現した。小埜涼子さんとはもう20年ぐらい前に出会ってから、年に1,2回だが共演している。纐纈さんについては5年ぐらい前に、白楽のビッチェズブリューで演奏したとき、マスターの杉田誠一さんから「岐阜県出身の女性奏者で・・」と教えてもらい、以後、名前を見つけるにつれ、いつか共演できるかな、と思っていた。今回、千葉さんのお誘いでそれが実現した次第である。
纐纈さんはテナーサックスで出演ということだったし、小埜さんはアルトを吹かれるので、今回自分はソプラノを吹くことにした。昔バブル時代には、バスクラ、ソプラノ、テナーといろいろ手を出して、一つのライブで複数の楽器を使い分けていたときもあったが、結果として、それぞれの楽器であんまり納得いく演奏が出来なくなっていったので、全て手放して、もとのアルト1本に専念することにした。丁度バブルが崩壊した頃のことである。
現在手元にあるソプラノは、2011年に亡くなった名古屋のサックス奏者鶴田哲也さんの遺品である。家ではときどき出しては吹いているが、ライブでは「今日はソプラノだけ」というように、アルトと併用して持ち替えをすることはしてこなかった。1本に集中したいという気持ちからである。しかし今回、ソプラノ1本でこのお二人のサックス奏者と共演するのは厳しいかな、と思いアルトも持って「なんや」に馳せ参じたることにした。
前置きが長くなったが、最初のステージは3人で演奏し、このときはソプラノを吹いた。小埜さん、纐纈さん共に豪放なサウンドでキレがあり、アグレッシブなブローをされる。その中で細身の音の曲線的な動きで、アルト、テナーの轟音の合間をすり抜けていくのが面白かった。が、やっぱりアルトに比べて出来ることに限界があるなあ、少し欲求不満になる。
セカンドステージは、3通りの組み合わせで7~10分程度のデュオ。小埜さんとのときも、纐纈さんとのときも感じたのは、お二人それぞれ、濃厚に主張する中でも演奏の流れを敏感に察知して対応していく、またここぞ!というときに流れを変えるような一石を投じる機敏さ、そのバランス感覚に長けているなあと思った。静かに吹いていても「いつでも爆発できる用意あり」という余裕を秘めて共演者の出方を見ている感じもした。一見して豪放磊落なイメージの演奏をしているかに見えても、決して暴走にならないのである。
自分は?と言えば、つい先日<怪談と即興音楽>で内省的な演奏をしたりして、傾向として(齢のせいもあるかな?)「淡さ」が目立つようなってきた気がする。そういう意味で、お二人との共演で刺激を与えてもらった気分である。
サードステージは再び3人で。このときはアルトを吹いたが、ソプラノのときとは違って、制約から解放された気分で踊るように吹奏できた。
最後になんやの店主のPUYOさんが入って4サックスで演奏。4人いると自分がやろうとすることを誰かがやっている、という事態になりがちである。なのでここでは、混沌とした中、上空を天女が舞うようなイメージでソプラノを吹く。気分良かった。
追伸
この日のライブの全容をお客さんで来てくれたアトムさんに動画で撮ってもらいました。上記の各セットの動画(You Tube)がそれです。コロナ禍中ご来場できなかった方に視聴していただければ幸いです。