2020年9月9日(水) 滋賀・近江八幡 サケデリックスペース酒游舘
この3年間、9月には酒游舘で藤田さんとの演奏会を行っている。過去2回は対バンがあったが、今回はワンマンで行う。また、過去2回のデュオの記録は「無頼派二重奏(2018)」「BURAIHA(2019)」としてCD化して公開してきた。(どちらも限定枚数のリリースだったのですでにSOLD OUT)
今回は、お互いのソロ、そしてデュオというゆったりしたプログラムで進行。まずは藤田さんのドラムソロ。出だしは数枚のシンバルのみの連打で、そのサスティーンが多様に複雑に重なり合って聴覚を支配する。そこから生まれる陶酔感がトランス状態に近いものになる。その後シンバルは止み、ドラムの打音によるきめ細かいパルスがうねりをつくる。いつもそうだが、藤田さんのドラミングは無国籍・無所属の流浪のシャーマンのようだ。約22分のソロにはストーリー性が感じられ、誰の介入も無用な完結した音楽、あるいは儀式だった。

続いてアルトサックスソロ。この数年何回も酒游舘で演奏させてもらっているが、ソロは初めてである。いろいろなサックス奏者がここでソロをやっているが、この音響下でソロをやりたいという気持ちはよくわかる。「いつかはここでソロを」という気持ちは以前からあったが、なかなかその覚悟が出来ずにいた。今回、藤田さんからの提案でソロも出来ることになり、「我が意を得たり」であった。
適度な長さの残響のある広い酒游舘の空間では、「間」を生かしたソロが出来る。ソロではあるが、むしろ静寂・沈黙とのデュオという感覚になる。なので急いた吹奏にならないのが良い。ソロだとどうしても音を埋めよう埋めようとしてしまって、結果良くないことが多いのだが、そういう演奏に陥らずに済んだ。

この後、久しぶりにデュオをやる。コロナ禍の影響もあるが、だいたい我々のデュオは数カ月から半年に一回ぐらいのペースなので、この前どんなデュオだったか印象が薄れていて、やるときは一期一会の心持ちで臨んでいる。この日、改めて思ったのは藤田さんのドラムのしなやかさとスピード感である。シンバルやドラムの疾走するパルスが激流になって渦を巻く感じで、ときどきシンバルの強打が鞭のように追い打ちをかける。この激流の渦の中では、流れに巻かれるままに次々と音が湧いてくる。お互いに自在にスピード感の伸び縮みを操りながらのアンサンブルは、(ジャズマンがよく言う)スイング感、グルーブ感、ドライブ感を生み出すのだろう。二人ともジャズをやったことが無いのでよくわからないが・・・。


写真は、喜納さん、小池さんから拝借。いつも現場検証をしてくれてありがとうございます。