Review: 坂田こうじ+柳川芳命@なんや

2020年9月13日(土) 名古屋・御器所 なんや

前になんやで二人だけの演奏会をやったのは2017年9月26日だったので、今回は3年ぶりになる。(デュオ以外での共演はその間にもあったが・・・)

坂田さんは、ジャンルを問わずいろいろなバンドでの演奏歴が豊富なので、やはり「ドラマ―としてのバンドにおける役割」が身に付いている人だと思う。一般通念としてリズムセクションの要であるドラマ―は、フロントのボーカリストやリード奏者の背中を押す、あるいは挑発する、というような演奏を心掛けるのだろうと思う。なので、サックスとのデュオの形態でも、サックス奏者の息遣いとか、フレーズ、メロディーの流れの切れ目、エモーションの高揚やクールダウンとかを敏感にとらえて、心憎いタイミングでくさびを打つような一撃を放つ。こういう鋭敏な反応(反射と言ってもいい)をしながらの対話のため、サックス奏者はとても「歌いやすい」気持ちになって調子に乗って吹いてしまう。この日は全般的にサックスはメロディアスだったと思う。坂田さんのドラミングは、相手を気持ちよく歌えるようにしてくれ、意思表示も明快である。エンディングなどは少しベタな感じのドラマティックな大団円になったが、それはそれでカタルシスを味わえてスッキリした。たぶん聴いていてくれた人も・・・。

前半のステージは10分程度の短めなのを3曲。最初はふたり同時に始め、2曲目はサックスソロから、3曲目はドラムソロから始めた。それぞれのソロから始めたのは、会話するときの話題提供をするようなものである。その話題にそって内容を掘り下げていくには10分という時間は適切だったと思う。これより長くなると話題からそれる。

後半のステージは、30~40分ゆったりと時間をかけて、いろんな話題をお互いに提供し合いながら、いろいろな話題に飛躍したり、脱線したり、会話が淀んだり、再び意気投合したりする面白さを味わいながら、行き先不明・着地点不定の演奏になればいいと思ってやった。が、その演奏も20分足らずで終わった。まだ続けることは出来たが、結論が出た後の討論はやっても無駄、という感じがしたので、あっさりと終了。デュオで全編即興で演奏するとなると、すぐ濃度が高まり、そんなに長い尺でできるものではないなと改めて思った。時間的に長く引き伸ばせば、どうどう巡りの会話になるだけで、「あ、これさっきしゃべったな」「また同じパターンに陥っているな」という感じになるだけである。

前半30分、後半約20分というコンパクトな演奏会だったが、中味は濃かったと思う。

独断のレビューではいけないので、坂田さんのコメントと、マスターのPUYOさんのコメントを以下、引用させていただく。

柳川さんとは、今回のように時々デュオのお相手をしていただいています。このフォームならではの心地良さがあると、個人的に思っています。即興演奏における自分の課題(または理想)を追求し続けられる、熱くもあり愉しい時間。今回なんや”HP”に書いてあった「勝ち負けではなく共闘」というワードに僕は妙に頷いてしまいました。今回、曲数のみ前回と同じでしたが角度を変え、短めのものを3曲、後半に長尺1曲という(計4曲の)内容になりました。どれだけ様々の想定から練習して臨んでも、本番では更にその上をいく感情や状況が必ず顔を出す。即興演奏の魅力が刺さった夜、とても愉しかったです。(坂田さん)

真剣さの勝負だった。人間、どういう場面で真剣になれるかは、違うんだろうけど、この日の二人はあの場で真剣だった。真剣ならいいかというと、真剣ならいいのである。一瞬一瞬にすべてをぶち込むのだね。生き急ぐのだね。今思えば、あんなにうまい坂田君が、こんなに即興演奏にはまるとは思わなかったな。(PUYOさん)