Review:HALBACH・Hyakuyoso・柳川@Scivias

2020年9月21日(月・祝) 名古屋 納屋橋 特殊音楽バーScivias(スキヴィアス)

HALBACH(Motomu Miura)電子音響  Hyakuyoso(Koh Takahashi) 電子音響 柳川芳命(as)

今月1日にBandCampでHyakuyoso +柳川のミックス音源『WASTE LAND』をリリースしたところで、今回はライブでのHyakuyosoとの共演である。東京からHALBACH(ハルバッハ)のMiuraさんが単独で参加。エレクトロニクス(電子音響)のアーティストとは、これまでも何人かと共演させていただいた。一言で「エレクトロニクスの人」と束ねてしまうは乱暴な話で、これぞれ機材や音の志向はかなり違いがある。Hyakuyosoのセットは整然として見た目にはシンプルに見える。一方のHALBACHは、テーブルいっぱいの大きな(今日では「大きい」と思えてしまう)機械でシールドが複雑に絡んで配線されている。自分はこういうのは知識が無いのでよくわからないが、HALBACHの機材はアナログシンセということである。

それぞれ20分程度のソロをやって、最後に3人で演奏する、というメニューで進めた。Hyakuyosoの音はデジタル音でありながら、大自然の音がする。聴いていて風景が浮かぶ。それは日差しのまぶしい緑の野山、というのではなく、暗く陰鬱で不穏な風景である。(これはまったくの主観なので、聴く人によっては全く違う情景を思い浮かべるかもしれないし、演奏者の高橋さん自身はもっと違うイメージで演奏しているかもしれない。)そして途切れることのない音の流れが、せせらぎからいつのまにか大洪水となって聴く者を取り巻く。

そのあと、サックスソロをやったのだが、電子音響のお二人に影響される部分もあって、あまり情念剥き出しのような吹奏にはならなかった。むしろサックスという楽器から引き出せる限りの非楽音を散りばめるような意識で、自分としては観念的・抽象的な演奏になったと思う。が、そういう演奏ばかりでは持たないので、適当に音楽的な旋律の演奏もブレンドしてみる。

次のHALBACHはレーザー光線(おそらく音に反応する仕組みなんだと思う)によるビジュアルアートもミックスされた電子音響だった。アナログシンセということもあってか、音が柔らかく温かい感じがした。耳にやさしい。いろいろな音が浮かんでは消えていくのだが、自分にはその音が純粋でチャーミングに感じた。決して聴いている人に圧力をかけるような音楽ではない。とても穏やかな気持ちでサウンドに溶け込めた。

最後の3人での演奏は、静的・内省的な音楽になった気がした。かつてはエレクトロニクスというと破壊的・暴力的なノイズの嵐、といった印象もあったが、まったく指向の異なる世界もある。ただし、それはこの日の演奏の印象だけのことで、もっといろいろな表情を見せることもあるのだろう。HALBACHとは今回初共演なので、事前にYouTubeなどの動画でちょっと予習をしたのだが、演奏場面によって全く印象の違う演奏だった。一回の共演で印象を決めつけるのは良くないな。特に電子機器を使った音楽は、既成楽器よりはるかに多様な音響のソースを内包しているのだから。

さて、終演後、スキヴィアスのマスターの服部さんの提案もあって、今後Hyakuyosoと柳川に、もう一人ゲスト的に参加してもらって3人での演奏会を始めてみようということになった。次回は12月19日(土)ゲストはこれから考える。