2020年12月26日(土) 岐阜市神田町 洋食屋Pannonica(パノニカ)
「FISSION & 蠍座二人組」
・武藤祐志(gt) 木全摩子(ds) 柳川芳命(as)
今年の4月、武藤さんとのデュオのCDをリリースしたということで、「FISSION」というタイトルのアルバムを摩子さんから送っていただき聴いた。まさに血が騒ぐようなデュオだった。武藤さんの演奏は、以前にも野道さんのグループでゴーストVで演奏しているのを聴いて、その後少し会話もした。そのときの演奏とはまた違った演奏が、このCDには納められていた。また、デュオというシンプルな編成のため、彼のギターの本領が余すところなく発揮されていた。メタル系の音楽をやっていた摩子さんともうまくコミットしていて好印象だった。以後、いつか武藤さんと共演しようという思いがあったのだが、ようやく実現できるときが来たという次第である。
摩子さんは2月以来、コロナの影響やご家族の事情でライブをすることが出来ず、今回は10か月ぶりだったそうだ。自分との共演も、昨年末にゴーストVで東京のMaresuke(contrabass)さんを交えた演奏をやって以来である。
「FISSION」のレコ発ライブは年明けに改めて開催するそうだが、今回はその先駆けを兼ね、まず二人でデュオをやってもらう。期待通りのコンビネーションだった。出だしの浮遊感があってアンビエントな音響空間づくりも面白かったし、後半の疾走感やボルテージの高さは快感だった。

続いて、初共演の武藤+柳川デュオ。あからさまなベタな迎合ではなく、相手の存在を絶えず尊重しての歩み寄り、といった感じだっただろうか。こういう音を出すとどういう反応をするだろうか?という試し合いをしながら、お互いに自分の音楽を拓いていく醍醐味が味わえた。回を重ねれば、また違った相手へのアプローチが生まれてきて、面白いアンサンブルができるという手ごたえがあって嬉しかった。武藤さんの演奏には、数多くの先人エレクトリックギター奏者の技がストックされている感じで、どのタイミングで何を蔵出ししてくるか、そのセンスが凄いなと思った。

デュオのステージの最後に、摩子さんと演奏。何か自分のフレーズが(意図せずにだが)、中近東風になったのだが、スピード感ある細かい怒涛のパルスが押し寄せてきて、うねりのある演奏になった。以前は摩子さんのドラミングの中に、どこか軽妙な音が随所に出てきて、演奏の雰囲気がガラッと変わることがあったが、この日は一貫してシリアスなムードがストレートに伝わってきて、あれ、少し芸風が変わったか?と思った。
休憩後セカンドセットは、トリオで約30分。ノープランでやろうかとも思ったが、初めてのトリオということもあるので、少し展開に道筋をつける意味で、サックスソロ→トリオ→ギターソロ→トリオ→ドラムソロ→トリオという流れを事前に確認してから臨んだ。それぞれのソロは次のトリオ演奏への方向性を提示することになる。最後エンディングを引っ張ったのは自分だった。その自覚はあったし、たぶん武藤さんも摩子さんも、サックスがなかなか終わらないな、と感じたのではないだろうか。自分としては、出だしからこれまでの演奏の流れの中で出てこなかったシーンを最後に描いてみたい、という我儘でそうなったのだが、お二人がうまくフォローして絡んできてくれた。

今回は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、21時には閉店を余儀なくされ、18:30~20:10ぐらいだったが、コンパクトで凝縮した演奏会になった。しかし、まだまだ進化・発展する余地があるグループなので、続編をやることを確認。ありがたいことにPannonicaのSachieさんからも、またやってください、という天にも昇るお言葉をいただけたので、演奏の翌日、次回のこのトリオのブッキングをお願いした。
次回は、2021年2月13日(土)会場は同じくPannonicaにて。
写真提供:Nakjimaさん(from近江八幡) 遠路ありがとうございました!