2021年1月23日(土) 京都 Annie’s CAFÉ
・哲学<哲太陽(電子楽器) 宮崎学(民族楽器)>
・AFTER IT’S GONE <柳川芳命(alto-sax) Meg Mazaki(drums)>
哲太陽さん、宮崎学さんのそれぞれとは共演経験があり周知の音楽仲間であるが、デュオ「哲学」としての演奏を聴くのは初めてである。哲さんはエレクトリックベースとシンセサイザー等のエレクトロニクス、学さんはシンギングボウル(大小7つ)、レインツリーのような楽器、ドラ、ゴングなどのアコースティックな民族楽器で演奏し、それぞれがときどきヴォイスも発していた。

とてもスペーシーな音響空間を演出していた。民族楽器の音の余韻、奥行きのある電子音響が、ゆったりした時間の流れの中で共振し合い、瞑想に導くような音楽だった。こういったデュオチームを編成する発想自体がユニークであるし、生み出される音響も斬新に思えた。学さんの民族楽器はそれぞれ単音しか発さないものなのだが、それらの組み合わせによって多彩な風景を描いていた。哲さんの重厚なベース音と電子音響が、学さんの音の背景になったり前面に浮上したりするダイナミズムにも心を奪われた。ぜひ注目してほしいデュオである。

今回、予定では中島直樹さんのコントラバスを交えたトリオで演奏する予定だったが、諸事情で中島さんが参加できず、デュオでの演奏になったので、シリーズ「AFTER IT’S GONE」として出演することにした。中島さんとのトリオは過去に2度ほど名古屋や大阪で行っているが、とても印象に残る即興演奏が展開できただけに今回彼の不在は残念だった。
デュオとしての演奏は2016年から始めていて、近年の「怪談と即興演奏」での経験を通して、単にハードボイルドなフリージャズから、和的な幽玄さや、静と動、緊張と弛緩のコントラストなど、演奏の幅が広がってきたと思う。終わってから「息の合った演奏だった」という感想を聴きに来てくれた方からいただいたが、そう感じるというのは、サックスとドラムスの呼応の仕方に、演者・聴者に共通する美意識とか高揚感や慰安を呼び覚ますものがあるからなのだろうか・・・。どんなにアバンギャルドな表現をしても、演奏が終わった後にカタルシスを演者・聴者ともに共有できるような音楽をしていきたいと思う。なのでAFTER IT’S GONEというシリーズ名になっているのだが・・・。もちろん課題はまだあるけど。
(写真提供)Teru Koikeさん、ありがとうございました。
あたしよしこさん、かつふじたまこさんとも久しぶりに会えてよかった。ライブの運営や営業自体が困難な中で場を提供してくれたAnnie’sの方には感謝したい。