2021年1月31日(日) 滋賀・近江八幡 サケデリックスペース酒游舘
・平松千恵子(語り) 柳川芳命+Meg Mazaki(演奏)
★CD「小さき殉魂」リリース記念公演
【演目】第一部 ・乳房榎 原作 三遊亭圓朝 脚本:平松千恵子
第二部 ・AFTER IT’S GONE(即興演奏)
・草ひばり 原作 小泉八雲
昨年12月に約1か月かけて制作したCD「小さき殉魂」のリリース記念も兼ねた冬の「怪談と即興音楽」シリーズの公演である。「小さき殉魂」は、「草ひばり」「雉のはなし」「おしどり」の小泉八雲の作品を収録したものであるが、今回はその中から「草ひばり」、そして「牡丹灯籠」「累が淵」に続く三遊亭圓朝作の「乳房榎(ちぶさえのき)」を演目に選んだ。どちらもこれまでの演目に比べ短編であるので、Megさんとの即興デュオシリーズ「AFTER IT’S GONE」のステージを独立して演目に加えた。演奏は約20分。
「乳房榎」のストーリーは、奇々怪々な部分もあるが、大筋は「仇討もの」である。登場人物は(牡丹灯籠、累が淵に比べれば)少なく、展開もシンプルで分かりやすい。こういった仇討ものが江戸庶民にうけたというのは、いったいどのような社会通念や倫理観が当時あったのだろう??と考える。知識が乏しいので書くことは控えるが・・・。
さて<語り>と<即興演奏>をどう絡ませていくか?ということについて、このシリーズを通して、これまでいろいろと試行錯誤を重ねてきた。演奏が効果音的だった場面もある。人物の心理描写の一助になるようにしたこともある。その作品の内容に応じて工夫してきたつもりである。前回の「累が淵」ではストーリーが長いということもあって、即興演奏を語りの合間に独立して入れていくことを極力控えて、語りのバックで即興的に演奏することをメインにした。このスタイルは、語りと即興演奏がパラレルに進行していく形として手ごたえがあった。
しかし、「怪談と即興音楽」と銘打っていて、音楽が語りの背景にいつも流れている、という形をとっても、聴衆の立場に立つと、語りが<主>、音楽が<従>になるのは間違いない。いっそ切り離すことで、両者のバランスを対等にする手もある。そういう舞台構成を今回は試みた。物語のボリュームが適度だったからこそ出来た舞台構成と言える。
今後、このシリーズをどう発展させていくか?というのを考える時が来たかな、と思う。怪談という物語がもつある種のムードにとどまると、どうしても演奏の傾向が似通ってしまう。
過日、京都のAnnie’s CAFEでのライブ終了後、CD「小さき殉魂」を店内に流してくれた。そのときそれを聴いていたマスターが平松さんの声に惚れ込み、この声で「・・(作品名)・・」「・・(作品名)・・」を語りを聴いてみたい、という提案をしていただいた。なるほど、マスターが挙げた両作品とも、仇討ものにある勧善懲悪、因果応報、倫理観とは対極の、背徳の極みのような作品(このマスターらしいな)である。きっと演奏の傾向も変わるのではないか?と思った。
今後の平松・柳川・Meg三人衆のコラボレーションの行方を楽しみにしていただきたい。
