Report : 新月夜会@Casa de la Luna

2021年2月12日(金) (名古屋・庄内通) Casa de la Luna  

・S.Shah スティーブン vo,gt ひとりBlasting Rod

・柴谷園 (柴田菜央vo  水谷吉典gt)

・YUZ &Pine Willow (谷向柚美vo マツダカズヒコgt 柳川芳命as)

約11か月ぶりのLunaでの演奏である。前回は店を探すのに困った。というのはあまりに普通の家屋過ぎて、すぐそばまで来ていながら見過ごしてしまったからである。周辺は空き家が多いようで、音漏れでの周辺とのトラブルは無いらしい。

通りの画像のようです

玄関のガラス戸を開けると、土間とソファーの置いてある間があり、その奥に数席のカウンター、さらに奥に8畳ほどの演奏する間がある。階段で2階に上ると楽器やアンプ等の収納の部屋があって、荷物置き場・楽屋になる。たいへんくつろげるスペースである。

コロナの感染状況の収束は芳しくないため、依然18時開演、20時終演ということで、出演した3チームのそれぞれの持ち時間は30分未満であった。結果、濃縮したパフォーマンスで淀みが無く3チームそれぞれの音楽性も変化に富んでいたため、飽きる間もなかった。

開演前「よしこちゃん迷子事件」があり、この界隈の土地勘に秀でた「YUZ & Pine Willow」のPineさんが、地下鉄庄内通駅周辺の捜索に出動するという出来事があったが、路上を彷徨うよしこちゃんは無事に保護され、先発のS.Shah スティーブンの演奏に間に合った。よかった。

スティーブンさんは、エレアコギター1本の伴奏で数曲、自身のバンド「Blasting Rod」の曲を歌い、最後にヘビーなテイストの「Come Together」で〆る、というステージだった。ロックと言えば、ギター、ベース、ドラムスは必要不可欠な楽器編成と思っていたが、一人でもここまでドライブする演奏ができるのだなあ、と感心、さすがであった。

1人、演奏している、ギター、室内の画像のようです

続いて、今回初めてご一緒した「柴谷園」のステージ。初めに水谷吉典さんのエレクトリックギターソロ。”枯葉”をパラフレーズしたスリリング展開に息を呑む。続いて柴田菜央さんの歌が加わり、あっという間に3曲のステージが終わる。菜央さんのフレッシュな声が心地よく耳に響き、琴線にまで浸透する。体内が浄化された気分。

1人、演奏している、立っている、ギター、室内の画像のようです

最後に出た「YUZ & Pine Willow」は、トリオとしては初めてであるが、それぞれ旧知の仲で共演歴がある。意外と言われれば意外な顔合わせだが、面白い音空間が創り出せような予感はあった。25分ほどの全即興だったが、自分としてはとても丁寧に演奏できた。「丁寧」と言うのは気持ちの問題で、共演者と創り上げる全体の即興の流れをずっと意識し、その中にあって自分の音はどうあったらいいのだろうという思いを終始持ち続けて演奏できた、というような意味である。丁々発止にぶつかり合って何かを生み出す感覚とは違う。月並みに言えば、協調しよう、共演者に献身的であろう、というような意識。それもこのスペースの環境がもたらした心理作用であろうか? 

それから、即興演奏の場面を転換させようという互いの「音のサイン」がとても良く察知できた。これは谷向さん、マツダさんの持ち技の多様性に起因する。一瞬で演奏の流れ・雰囲気を変える術をいくつか持っていて、タイミングを見計らってそれを出せるからだろう。で、そのタイミングも不自然さが無く3人の歩調がうまく合っていたと思う。時間的な制限がなければまだまだ演奏は続いただろう。

終演後、マスターのピエールさんから出演者みんなにカレーをふるまってもらい、早く帰って早く寝た。近年、体力落ち目の自分にはありがたい。