2021年2月13日(土) 『蠍FISSION』
・武藤祐志(gt) 木全摩子(ds) 柳川芳命(as)
岐阜市・神田町 洋食屋パノニカ
昨年12月末に引き続き、このメンバー、この店で2回目の演奏会を行う。前回も時短営業期間で21時閉店ということだったが、さらに今回は厳しくなり20時閉店という事態になった。それに合わせて18時開演する。慌ただしい感じがしないでもないが、1時間半ぐらいは演奏に費やせる。30分2ステージ構成というのが、最近の自分の演奏会時間の相場になっているので、演奏時間が減ったという意識は無い。自分には十分ゆとりがあった。
さて、前回は初顔合わせ(特に武藤さんとは)ということもあったので、デュオを3通りやって、じっくり向き合って互いを知る、というような場を持ったが、今回は最初のステージからトリオで演奏する。勿論、事前に打ち合わせるのは尺の長さ(演奏時間)ぐらいで、あとは全くの白紙で臨む。
この第1セットの出だしは、自分には過去に経験したことの無いような展開になった。ギターのフィードバック音とサックスのロングトーンが奇妙に美しいハーモニーになり、その響きから「あ、なんか昔のプログレ風の曲みたい」というイメージが浮かんで、珍しく最初からメジャー系のメロディーが出て来る。サックスのメロディーのキーやモードを武藤さんが素早く掴んで、それに絡んでくる。途中スパニッシュ風なモードになったりして、フリーフォームでありながらも「音楽」を感じさせる演奏になった。そういう展開にある種の気持ち良さを感じつつも、それを壊していくような展開にもっていったり再び調性を感じる展開にもっていったりと、いろいろ働きかけながら展開していく。
まだ2回目ということもあって、「おお、そこでこう来るか・・・」という予想外の反応は多々あたことだろう。展開の好みとか癖を探りながら相互に実験的に仕掛け合っていくのは、即興ユニットならではの面白さである。だが、武藤さんも摩子さんも楽器を操る技に秀でているので、そう単純に自分を「素」のまま晒さないで「ひねり」のある返し方をしてくるかな。
セカンドセットはちょっと趣を変えて、ソロを繋いでいき最後にトリオでゴールに進む、という筋書きでやってみる。ファーストセットと似た傾向の演奏にならないようにという思いもあったからである。繋ぐと言っても、前の演奏を継承して自分の演奏を拓いていくということでもなく、どう繋ぐかも各自思うがままである。
もともとフィールドの違う3人であるということを承知の上で組んだメンバーである。異物化合から生まれる予想外の化学反応から、自分は次にどんな切り込み方をしていくか?というスリルを楽しみたい。結果として、ロックなのかジャズなのかフリーインプロビゼーションなのか、カテゴライズできないような音楽になることが望ましいと思う。
「他人と演奏するということは、これまで創り上げた自分のやり方から脱皮して、新たなアプローチを見つけるためである」などと自分に言い聞かせる次第である。まあ、そればっかりでもないけど・・・。

写真提供は、Ogawa Masayoshiさん。今回も遠くから来ていただきありがとうございました。