Report : 大森菜々+柳川芳命@Valentinedrive

2021年3月7日(日) 名古屋・今池バレンタインドライブ

・大森菜々(pf) + 柳川芳命(as,ss)

ピアノとのデュオでワンマンライブをやったことがあったかな?と、振り返ると、大阪のあかぎしほさんとの演奏ぐらいしか思いつかない。トリオ以上での人数のユニットでピアニストとの共演はあるのだが、デュオオンリーではほとんど経験がない。個人的にはピアノとサックスのデュオというのは好みで、やってみたい気持ちはずっと以前からあった。

今回共演を依頼した大森菜々さんとは、小山彰太さん(ds)とのトリオ、pd(大森菜々+酒井美絵子)にゲスト出演、それから「Machine Gun」での大人数でのライブといったように、いつもドラマ―がいる形ばかりだった。ドラムスのいない編成での大森さんのピアノプレイとやってみたかったし、1対1で向き合う形でやってみたいと思い(やや勇気を出して)この企画を敢行。

大森さんの持ち味としてのハードドライビングなピアノばかりではなく、現代音楽等のバックグランドも発揮してもらって、サックスもハードブロウに終始しないで、ふわふわとたゆたうような演奏をしてみるとどうなるかな?などと期待をもって臨む。加えて、あまりフィジカルな音にならないように、めずらしくソプラノサックスも併用することにした。

1セット目、ピアノとソプラノサックスのデュオを約15分。5分程度の短めのピアノソロ。ピアノとアルトサックスのスローなデュオを約10分。

2セット目、ピアノとソプラノサックスの疾走感あるデュオを約10分。5分程度の短めのアルトサックスソロ。(本日の共演の仕上げとしての)アルトサックスとピアノの20分程度のデュオ。

スローな演奏も速い演奏も、インテンシブなインタープレイになった。演奏中の意識の流れはスローな即興演奏でも速い。デュオなので、相手の音の動きにどう対置するかということに集中しやすかった。大森さんのピアノはとても敏感で、ピュアなセンスで共演者の音を受容していく。相手の動きを無視するとか、対峙するような態度はとらない。激しく演奏しても、相手を攻撃するような感じは受けなかった。基本的に「二人での演奏」を創ることに献身的な感じがして、裏表無く素直に自分を拓いていく感じを受けた。

大森さんには絶対音感があり、単音旋律楽器のサックスが調性とかモードをわりと露骨に出しても、それに敏感に察知したフレーズで対応できるため、無調になろうが多調になろうが破綻をきたすことは無かった。(と自分では思った。)ときにアナーキーな絡みになったとしても、着地点に戻れる安心感があったし、こちらがそろそろ終わろうかなと思っていると、読心術を心得ているかのようにエンディングに導いていく。最後のアルトサックスとのデュオでは、エンディングの兆しが見えても、こちらが駄々をこねて引っ張ったところがあったので、「なんか、しつこく吹いてるな」と思ったことだろうと思う。しかし、そんな共演者の気まぐれな動きにも、多彩なかかわり方でアプローチしてくるのが凄いところだなと思った。

世代的には隔たりがあって、聴いてきた音楽もやってきた演奏も違うのだろうけど、そういうのを越えて協同で音楽を創れるのが即興演奏の面白いところだな、と改めて思った次第。またいつか共演してもらえればありがたい。