2021年5月21日(金) 京都・くいな橋 Annie’s CAFE
・[a blank] <野道幸次(tenor sax) 有本羅人(bass-clarinet, trumpet) 佐藤諒(bassoon) 柳川芳命(alto sax)>
・鉄男<小池テル(tenor sax) つるちゃん(drums)>+まさお(gadget)
・フジタナオキ<visual art>
管楽器奏者4人編成の新しいグループ [a blank] 立ち上げの演奏会。愛知、岐阜、京都、兵庫からの集結なので、今回は中間地点の京都での共演となった。
[a blank]のメンバーは、発起人の野道幸次さんが最終的に選出したもので、有本さんと佐藤さんは旧知の仲だが、野道さんと自分は佐藤さんと初対面である。佐藤さんは「ディスロケーション」のドラマ―森公保さんが営業する「パララックスレコード」でバイトをやっているそうだ。世の中狭いなあ。
バスーンという楽器との共演は初めてである。サックスやトランペットに比べ音量的に小さく、増幅が必要かと案じたが、サウンドチェックの時点で各自音量を加減しながら吹けば、4つの管楽器の音は明瞭に聴きとれるだろうということで、いっさいPAを使わずに合奏することにした。
自分の経験から、管楽器奏者3人との即興演奏なら自分以外の奏者の音を聴きながら演奏できるが、4人となるとどうだろう?サックスばかりの4人だと混沌としてしまうので、ほとんどやったことは無い。何も決め事も無く全即興でやるならトリオまでが限界かな、と思っていた。実のところ野道さんは事前にプランを考えていたが、結局、初回なのでとりあえず何も決め事なしでワンステージ(持ち時間約40分)やってみよう、ということになった。やや実験的なところもあった。
結果として、4つの管楽器の音色や音域の違い、そして、4つの音が生きるように音量や間、吹き方のコントラストを各自が意識して演奏したため、混沌とした感じにならず、立体感ある響きができて面白い四重奏になったと思う。自分の立ち位置は、バスーンの佐藤さんと一番距離があったため、今一つバスーンの音が遠い感じだったが、録音機を佐藤さんの立ち位置の近くに置いたため、録音では、短いフレーズのリフレインやロングトーンによるドローンなどを使い分けながらのバスーンの演奏が効果的な役割を果たしていたとわかった。
演奏中、自分以外の3人の音にどう喰い込んでいくか?という「ひらめき」は尽きることなかった。もっと長く続けることは出来たが、同じような展開の繰り返しになっては、やっているほうも退屈してくる。初めてのメンバーでの合奏なので、そろそろエンディングだな、という終止感を共有することはなかなか難しい。終わるかな?と思うと誰かがまた吹き出す、という形が繰り返される場面もあった。
聴いている人はどうだったか?約45分間の演奏だったが、飽きてこなかったか?管弦打が揃った編成でもなく、ソロを回し合うわけでもない(時々は自然発生的にトリオになったりデュオになったりソロになったりした場面はあったが・・・)集団即興45分間というのは、少し長かったかもしれない。そのあたりの演奏時間の尺の問題は、今後野道さんがアイデアをひねることだろう。とりあえず初回でこれだけ変化に富んだ展開ができたことを「良し」としよう。

この写真は、映像のフジタナオキさんの動画から拝借。リーダーの野道さんはバスーンの佐藤さんの影で見えないが、野道さんの音が全面に出て集団即興を牽引している場面である。
さて、対バンの<鉄男withまさお>。テナーサックスとドラムスのコンビネーションに、まさおのガジェットによるエレクトロニクスの音が絡む。このコラボレーションもおそらく初めてだったのだろう。演奏開始から10分ぐらい過ぎた頃には、3人のエモーションの波長が合ってきてエキサイティングになってきた。写真は残念ながら無し(この日スマホを家に忘れてきた。申し訳ない)。
なお、今回急遽参加してくれたフジタナオキさんの映像は、<鉄男withまさお>の場面しか見られなかったが(自分たちの演奏中は背景に写されていたので見ていない)、昨今、OHPを使う仙石彬人さんとかタキナオさんとのコラボ経験があるので、すんなり受け入れることが出来たし、視覚と聴覚の刺激が押し寄せてくる感じで、視聴していてイメージが一層広がる。いいステージになったなと思う。