2021年6月3日(木) 名古屋・今池 TOKUZO
・語り 平松千恵子 ・音楽 Meg Mazaki (ds/per) 柳川芳命(as)
・演目 転生~小泉八雲「閻魔の庁で」「貞子の話」「蠅の話」オムニバス~
草ひばり(小泉八雲)
これまで、「怪談と即興音楽」というタイトルでこの3人で公演してきたが、演目の分野を怪談にとどめず拡張してみようということで、「語り」という大枠にタイトルを変えた。今回その第一弾をTOKUZOで開催。
今回の演目はすべて小泉八雲の珠玉の小品である。「閻魔の庁で」「貞子の話」「蠅の話」 の三作を<転生>という共通項で平松さんがオムニバス化したものと、昨年12月にリリースしたCD『小さき殉魂』の中から「草ひばり」を選んだ。
緊急事態宣言が6月1日から20日まで延長されたため、閉店時刻20時に収まるように、18時30分から約1時間のワンステージに圧縮。柳川+Megデュオのみの場面も交えて、コンパクトなステージにした。小泉八雲の各演目は、10分程度のシンプルなストーリーの短編ながら、情感に染み入る、琴線に触れるお話ばかりである。集まってくださった方も、わかりやすく楽しめたのではないかと思う。(なお、TOKUZOには有観客配信で上演させてもらった。ありがたいことである。)
この「語り(怪談)と即興音楽」のシリーズでは、フリーフォームの即興演奏をする上で場面の情景や人物の心情が反映するような演奏をしたい、と思って取り組んできた。そうなると(やはり)メロディーは重要な要素だと思う。これはサックスという単音旋律楽器を扱う上でも宿命のような気がする。
フリージャズをやり始めた頃は、いかにサックスらしくない音を出すか、とか、ノン・フレージングの演奏をするかということにこだわりがあって、メロディー否定を信条にしていたが、今は、メロディーに軸足を置いたフリーの演奏にもっと開発の余地があるのではないかと思うようになった。メジャーでもマイナーでも、●●●アンスケールといったモードでもない旋律(聴きなれた気持ち良いメロディー、違和感があって気持ち悪いメロディー、が混在したような・・・)で吹奏が出来ないものか・・・と考えている。近年、サックスの<特殊奏法>ということで、奇矯な音を出すためにいろいろな試みをしているサックス奏者がいる中、ちょっと逆行したことをやってみたい、というアマノジャク気分でもある。
さて、
幼児から老人までを見事に使い分ける平松さんの声色(こわいろ)、この場面でそういう音を出すか、と意表を突かれつつも、なるほどな、と納得させるMegさんのパーカッション。とてもいい感じだった。
配信された映像をまだ観ていないが、後日動画のデータをTOKUZOから送っていただけるそうである。親切この上ない店だ。自分の演奏に関しては、視聴の楽しみ半分、怖い半分である。
このシリーズ「妖」、次回はジョルジュバタイユ作「死者」に挑戦。小泉八雲の世界から、エロティズムとデカダンスの世界に転移する。どうなることか・・・。乞うご期待。
