Report:哲学/MegTan/浅野和恵+柳川芳命@Annie’s CAFE

21年7月3日(土) 京都・くいな橋 Annie’s CAFE

・哲学 <哲太陽(電子楽器)+宮崎学(民族楽器)>

・MegTan <Meg Mazaki(ds) +一談(pf)>

・浅野和恵(自作楽器+エフェクター)+柳川芳命(as)

3つのデュオユニットの演奏会である。つい一週間前に、哲太陽+Meg+柳川のトリオを酒游舘で演奏したばかりであるが、(意図したわけでないが)この日はそれぞれがそれぞれのパートナーとデュオをやるという形になった。哲学はもう数回の共演歴があるが、MegTanは2回目。浅野+柳川も2回目(といっても1回目は4年前にほんの短い時間の共演だったので、今回が初共演と言ってよい)である。

哲学の二人は、楽器といってもローテクなものや、電子楽器(+エレキベース)という非楽器を使った音響をメインにした即興演奏である。対するMegTanはピアノとドラムセットというどちらも洗練された西洋楽器によるデュオ。浅野+柳川デュオは、幽玄で異形な音響を発する自作楽器と、サックスという西洋の超メカニカルな旋律楽器とのデュオである。楽器の特性の違いから、デュオの在り方もそれぞれ異なっていて、その違いを楽しめるライブとなったと思う。公約数的に単純に言えば、「どんな音をどのように時空間に散りばめて、相手の音に重ねるか、それが面白いかつまらないか」ということであろう。

哲学の場合は電子楽器と民族楽器という対極的な性格の音、さらに人間の生々しい声が加わり、音の組み合わせの豊かさに目から鱗が落ちるような瞬間が随所にあって心が躍った。

ドラムとピアノという叩いて鳴らす似た者同士の楽器のため、至近距離での応酬、あるいは対話的(挑発的)な共演になり、そのスピード感とかエネルギーの衝突が爽快で魅力的だった。

浅野+柳川デュオは、対話的というのでもなく、音響の重ね合いというのでもない。お互いの存在を深く意識しながらも、それぞれが独白をしていくような関わり合いになった(と思う)。自分はエレクトロニクス奏者と演奏することが(フリージャズ系のサックス吹きにはめずらしく)多かった。岡崎豊廣、桑山清晴、菊池行記、武藤宏之、小野浩輝、鈴木茂流(永久持続音の頃)、Ko Takahashi(敬称略)・・・。他にも単発のセッションでやった人も何人かいる。

非楽器の人の演奏にサックスでどう絡むか?ということをいろいろ試行錯誤したこともあったが、結論として今思うことは、呼応しようなどとは思わず、その音響から受ける印象を触媒にして自分のソロをやればいい、ということである。そこには楽器奏者との共演には無い自由さがある。なので自分は楽しんで吹奏でき面白いのである。浅野さんの音(音響)はその変容していく様がとても繊細である。また、器機の操作だけでなく、叩く、触る、擦る・・・といった行為による演奏も加わっているので、情感を音に乗せやすい。それが浅野さんの固有性かもしれない。上に挙げた奏者(操者)それぞれのアプローチの違いは、漸くにして分かるようになった。いや、わかったつもりになった、という程度かもしれない。

演奏を聴いてくれた小松バラバラさんが、次のようなメッセージを送ってくれた。

  「今日はわたしには柳川さんの優しい音色が印象的でした。」

今後、小松さんと共演するときも、浅野さんとやるときのように優しい音色でやろうかと思った。しかし、小松さんとやるとき、それは難しいだろう・・・・。