2021年7月9日(金) 東京・入谷 なってるハウス
・照内央晴(p) 神田綾子(voice) 柳川芳命(as)
それぞれデュオでは共演したことがあるが、3人そろってやるのは初めてである。想定外の何が飛び出すかわからないスリリングなトリオ。
3月に神田綾子さんと自分はセッション的にショートでデュオをやった。そのきっかけを作ってくれ、この日も聴きに来てくれた齊藤聡さんが、こんなレビューをフェイスブックに投稿してくれたのでそれを掲載。
今年の3月に初共演した柳川芳命さんと神田綾子さん、そしてそれぞれとの共演歴のある照内央晴さんのトリオによる即興。さほど回数は多くないのかもしれないけれど、目新しいサプライズは期待しない。持ち味の発揮とテンションの維持は担保されている。
ファーストセットでは、水面下に潜むアルトをソナーで探し当てたピアノが振動を与えるはじまり。これを視ていたヴォイスがずいと加わってくる。音を出すたびに事件を起こすアルトとヴォイス、和音でにじり進むピアノの三者が音のプラトーを作り出し、全員でそれを上にぐいぐいと持ち上げていく。強い塊の隙間にお告げのように入るヴォイスがおもしろい。絶えず音を突き上げるヴォイスとアルト、それに塊を解体して別の構造を作ろうとするピアノとの対比もまたおもしろい。終盤は全員が次第に低空飛行して着地点を見出した。ただ、柳川さんは息を止める前に悔恨のような音を出した。
セカンドセットでの対比はまた違っていた。アルトとヴォイスとによるナラティヴ、それに呼応して世界に色を垂らしていき、光の粒で埋めていくピアノ。ただシンクロする組み合わせは変化もしていて、物語の呼吸をアルトとピアノとで合わせ、抑制からそれぞれの狂気にのぼっていく驚きもある。そして音世界の事件を包んでいたはずのピアノが事件の主犯になり、一方でアルトが音世界を包むような逆転もあった。中盤からは神田さんが世界の中心に逃げずに立ちはだかり、ふたりのエネルギーを吸い取っては別のナラティヴを生んだ。(終わってから『宇宙戦艦ヤマト』の「コスモクリーナー」のようだったと言って笑った。)たいへんな迫真性があった。照内さんはステージ上のありさまを横目で見て笑みを浮かべている。やがて柳川さんと神田さんは踵を返して鳥になり、照内さんは大きな慣性をもつピアノという生き物として最後まで走った。
続いて、演者の照内さんの投稿から。
今日もご来場ありがとうございました!まん延防止措置で20時閉店の為、演奏は30分と小休止挟んでの35分程、これはこれでややコンパクトながら、無駄を削ぎ落とし集中したセッションができる面もある。どちらかと言えば、アッパー系だったのかな、ところどころ遊び心ありつつも。神田さんと芳命さん、二人が超ハイテンションで凄いっ!な場面もあったし。以前はUP系だとどうしても余裕なくなりがちだったが、今日はそんな時にも俯瞰できるじぶんがいるような気がして、成長したんだな、と思った。初めての組合せだと、いい意味で驚くとか違和感を感ずるとか、ある。この頃新しい共演者との即興だとそれが感じられて嬉しい。新鮮なのだ。コロナ禍のいまだからこそのなにか、というのも、即興だからよけいにあらわれるように思う。そんな音を紡げたかな、と思う今日。
今回のレポートはこのお二人のコメントで十分かな。久しぶりにフィジカルに暴走することへの快楽を味わいながら吹奏した。
