Report : ROW project CD リリース記念ライブ@バレンタインドライブ

2021年7月11日(土) 名古屋・今池 バレンタインドライブ

・野々山玲子(ds) 臼井康浩(g) 柳川芳命(as)

 ゲスト:宮本隆(b) 奥村俊彦(p) 直江実樹(radio)

昨年春、コロナ禍の中でライブがほとんど中止になった時期に、自宅で自分の即興演奏を録音し、それを聴いた他者が順に即興で音を重ねて作品を作る、というプロジェクトを野々山さんの発案で立ち上げた。その第1期のメンバー3人の試みを徐々に拡大していこうということで、第2期には、直江さんと奥村さんに加わってもらった。また第3期には宮本さんに加わってもらった。それぞれ多重録音して仕上げた音源はBandCampにアップしてきた。その後、CD化の話がもちあがり参加メンバーが同意してBandCampにアップした作品からセレクトしてCDをリリースした。

今回のライブはその発売記念として開催された。第1期~第3期のすべての参加メンバーが一堂に会して、ライブで演奏することになったわけである。謂わば通信制の学校の生徒たちがスクーリングで顔を合わせたようなものである。

座長の野々山さんのプランで、次のように演奏が進行した。

①柳川+臼井+野々山  (これはプロジェクト立ち上げのベーシックメンバーである。)

②宮本+直江+臼井+野々山 (ゲストを交えた組み合わせ。電気系)

③奥村+柳川 (ゲストを交えた組み合わせ。アコースティック系)

④直江ソロ→+奥村→+宮本→+野々山→+臼井→+柳川 (「大きなかぶ」のお話のように、一人ずつ加わって最後に全員になるという形態。プロジェクトの進行のように各自が自宅でやってきたことをライブでやる、というものである。)

楽器編成的に管・弦・鍵盤・打・電とバランスがよく、それぞれのサウンドと各プレーヤーの即興言語の異なりから、各自の演奏が集団に埋没することなく、きわだって煌めいていた。勿論、各楽器の問題だけではなく、即興で他者と共演していくうえで、アサーションとコーポレーションをバランスよく表出していけるメンバーであったことが良かったのだろうと思う。その結果、どのセットも演者一人一人が対等で、フロント⇔バック、リード⇔サイドといった階級的なものの無い、まるで理想社会のような音楽が展開された。

このPOW projectの第4期が現在進行形で行われている。再度オリジナルメンバーに戻って、もっと面白い多重録音の手順・方法は無いか?と模索しながらの試みである。これはあくまでライブ演奏とは違って、レコーディングのプロジェクトである。即興音楽生成の過程はライブとは全く違うが、出来上がったものを聴いてみると両者の違いがほとんど無い。そのことが自分にはもとても興味深い。ROW projectのCDを聴いて、これはライブでの集団即興演奏ではない、と誰が見抜けるだろうか・・・。