Report 語りと即興音楽「妖」@アニーズカフェ

2021年8月9日(月・振休) 京都 くいな橋 アニーズカフェ

平松千恵子(語り・三味線)、柳川芳命(alto-sax) Meg Mazaki(ds,percussion,gong)

演目「死者」~原作:ジョルジュバタイユ

  「鳥羽の恋塚 文覚上人発心譚」~脚本:平松千恵子

このシリーズ「妖」の2回目の公演で、アニーズカフェでは初出演になる。怪談という枠から抜け出し、アニーズカフェの店長タケノさんの「バタイユの「眼球譚」を平松さんの語りで聴いてみたい」というリクエストに、それは面白そうだ、と今回の演目を決めた。「眼球譚」はちょっと長いので、文章量から「死者」を選んだ。それでも語りだけでも1時間はかかる。平松さんのほうで翻訳文を少しアレンジしてもらってシナリオが出来た。

「死者」はバタイユにとっては短編で、わかりやすいストーリなのだが、文章を目で追って読んでいても、なかなか不可解で何度も戻って読み返さなければいけない部分がある。同じ人物を「作男」とか「ピエロ」と呼ばせたり、「伯爵」を「小人」などと複数の呼び方で書いてあるので、人物の点で混乱する。また隠語もピンとこないものも出てきて(フランス語の翻訳なのでしょうがないけれど)、かなり想像力を働かせないと場面を脳裏に描きにくい。果たして、初めてこの物語を聴いた人は、内容がよく理解できただろうか?何と言ってもこの物語の主人公の「マリー」の言動を通して、バタイユがテーマとしたかったことを理解するのはなかなか難しい。さながらエロスとタナトスという対極的なものが、実は人間の本性では表裏一体なのだ、というようなことかな?

「鳥羽の恋塚」は、登場人物も少なくシンプルなストーリーで、この話に出て来る「袈裟」は、「死者」の「マリー」とは対照的な女である。それぞれが選んだ死へのモチベーションも対極的に思えるが、実は深層ではイコールなのかもしれない。わからないが・・・。